最新記事

旧ソ連圏

モルドバが第2のクリミア半島に?

ロシア編入を果たしたクリミアに刺激され、モルドバでも分離・独立運動が加速

2014年3月20日(木)16時13分
デービッド・カシ

不穏な空気 沿ドニエストルとの国境を警備するウクライナ軍 Yevgeny Volokin-Reuters

 ロシアのプーチン大統領は3月18日、ロシア系住民が多いウクライナ南部のクリミア半島を独立国家として認め、ロシアに編入すると宣言した。クリミア情勢を受けて旧ソ連圏各地でロシア系住民による分離・独立熱が強まるなか、ウクライナの隣国モルドバが「第2のクリミア」になる可能性が高まっている。

 人口400万人のモルドバでは、国民の大半は文化的、人種的にルーマニア系のルーツをもつ。だがモルドバ東部の沿ドニエストル地域にはロシア国籍をもつ20万人のロシア系住民が暮らしており、1990年にモルドバからの独立を宣言。国際的には「沿ドニエストル・モルドバ共和国」の主権は認められていないものの、事実上の自治を確立している。

 クリミアの分離・独立を受けて、沿ドニエストルでもロシア編入を求める動きが再び活発化。3月17日には、沿ドニエストル議会が同共和国のロシア連邦への編入を認めるようロシア下院に求める決議を採択した。

 沿ドニエストルの分離・独立運動の歴史は長い。1992年には分離・独立を求める沿ドニエストルとモルドバが衝突し、300人の死者が出た。その後、停戦が成立して非武装地帯が設定され、今も2000人のロシア兵が駐留を続けている。

 ロシア政府はこれまでも、同胞を守るためなら他国に軍事介入する権利があると明言してきた。沿ドニエストルについても、クリミアと同じように同胞を守るという名目があるわけだ。「クリミア問題で、ウクライナは20年前のモルドバと同じ問題に直面している」と、モルドバのイウリエ・レアンカ首相は語っている。

 沿ドニエストルがロシアへの編入を要求したのは今回が初めてではない。2006年に実施された住民投票でも、モルドバからの独立とロシアへの編入が圧倒的多数で可決された。賛成票の割合はなんと、クリミアで16日に行われた住民投票における「ロシア編入賛成」の割合と同じ97%だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=下落、ダウ330ドル超安 まちまちの

ワールド

米、ロシア石油大手ロスネフチとルクオイルに制裁 ウ

ビジネス

NY外為市場=英ポンド下落、ドルは対円で小幅安

ビジネス

米IBM、第3四半期決算は予想上回る AI需要でソ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 6
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 10
    やっぱり王様になりたい!ホワイトハウスの一部を破…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中