最新記事

インドネシア

たばこ会社を門前払いしたバリ島の勇気

たばこの国際見本市開催を拒んだバリ島の決断は「たばこ天国」変化の兆し?

2014年1月30日(木)18時09分
ピーター・ゲリング

規制なし インドネシアでは子供の喫煙者も多い Enny Nuraheni-Reuters

 国民の3分の1が喫煙者の「たばこ天国」インドネシアでは、町中至る所でたばこの広告を見かける。たばこ産業の存在が当たり前すぎて、米フィリップ・モリス社が子供向けコンサートや難民キャンプを支援していても、誰も気にしない。

 インドネシア最大のたばこメーカー、ジャルム社がジャカルタ市内に設置した人気銘柄「L.A.ライツ」の看板には「Don't Quit(禁煙するな)」の文字が。しかも、「Do」と「it」は赤字で書かれており、「Do it(吸え)」の文字が浮かび上がる。

 子供への広告を規制する仕組みもないため、13〜15歳の2割が喫煙者だ。たばこのせいで命を落とす国民は、毎年22万5000人にのぼる。

 2010年には、インドネシア人の2歳の男の子がたばこを毎日40本吸う様子がYou Tubeに公開されて、大きな話題になった。これを受けて国内からもたばこ規制を求める声が上がったが、政府に汚職が蔓延し、たばこ業界が絶大な富を握っているこの国では、そうした動きはすぐに立ち消えになった。

 欧米諸国がたばこへの規制と課税を強化するなか、たばこメーカーはかなり前から東南アジア市場に軸足を移してきた。その戦略は大当たりし、各社とも利益を伸ばしている。

 それだけに、世界有数のリゾート地として知られるインドネシアのバリ島がたばこ産業にノーを突きつけると、大きな衝撃が走った。バリ州のマンク・パスティカ知事が、2月末にバリ島で予定されていた世界最大のたばこ見本市「インター・タバコ・アジア2014」の開催を拒否したのだ。

 たばこの健康被害などに取り組む活動家からは称賛の声と、こうした動きがインドネシア全土に広がるよう期待する声が上がっている。東南アジアたばこ規制連盟(SEATCA)は「知事は州民の利益を何より優先した」と褒めたたえる声明を出した。

 地元が失うものは小さくない。大型の国際会議はこの地域の観光業の目玉であり、見本市を開催しないことで巨額の収入源を失うことになる。

 そんななかで下されたバリ州の決断は、インドネシア人とたばこの関係が変わる大きな一歩になるかもしれない。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米ハイテク株高が支え 円

ワールド

メキシコ中銀副総裁、来年第2四半期のインフレ目標達

ワールド

米下院、カナダ関税撤廃決議案を可決 トランプ氏への

ビジネス

FRBが銀行検査で「監督上の注意事項」運用見直しへ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 10
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中