最新記事

シリア

ニセ残虐映像がもたらす果てしない混乱

政府側や反体制派が敵の仕業として公開する残虐ビデオは、外国製だったり世界中の紛争で使われている「人気コンテンツ」だったりすることもある

2012年11月13日(火)18時09分
トレーシー・シェルトン

子供だまし 自由シリア軍(FSA)の特殊部隊とされた兵士たちの銃は中国製のおもちゃだった YouTube

 血みどろの戦いが続くシリアでは、ネットで公開されるビデオ映像がプロパガンダとして重要な役割を果たしている。よくあるのは激しい攻撃や暴行、大量殺りくの映像だ。大勢の女性や子供の死体を映したものもある。

 こうした映像は果たして信頼できるのか?

 10月、激戦地の北部アレッポにいたある記者は、反体制派の兵士から壮絶なビデオを見せられた。政府に拘束されたらしい人物がチェインソーで首を切られる映像だ。

 非常にリアルな映像だったが、実は5年近く前にメキシコで撮影されたもので、麻薬がらみの殺害だった。この映像は、シリアを始め世界各地の紛争地帯で反体制派に利用されているという。

 偽物とはいえ、こうしたビデオは大きな影響力を持っている。先週には国連が、シリアの反体制派は戦争犯罪を犯している可能性があると非難。政府軍兵士が反体制派の武装勢力に処刑される映像がユーチューブに投稿されたのがきっかけだった。

 この特定の映像は本物の可能性が高いらしいが、偽物ビデオは世界の主要メディアで次々と流され、SNSなどでも広まっている。争い合う2つの勢力が、同じ映像を使って互いを非難することも珍しくない。

 3月には、反体制派の支持者らが自由シリア軍(FSA)の特殊部隊の設立を発表した際、銃を手にした兵士たちの映像をにユーチューブに投稿。ところが6月、ニューヨーク・タイムズがこの映像はインチキだと証明する決定的な証拠を見つけ出した。イギリスの王立武器博物館の専門家が写真を分析した結果、マスクをした兵士たちが手にしている銃は、中国製の「5歳以上の子供」向けおもちゃだったという。

 ニセ映像に惑わされて真実を取り違えれば、罪のない多くの人が犠牲になりかねない。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=続落、ダウ約120ドル安 原油高でイ

ビジネス

FRB議長への召喚状差し止め、米地裁 司法省は控訴

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、有事の買い続き159円台後

ビジネス

米1月求人件数、694.6万件で予想上回る 採用は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 7
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 8
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 9
    謎すぎる...戦争嫌いのMAGAがなぜイラン攻撃を支持す…
  • 10
    北極海で見つかった「400年近く生きる生物」がSNSで…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    40年以上ぶり...イスラエル戦闘機「F-35I」が、イラ…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中