最新記事

中国社会

広州暴動だけじゃない中国崩壊の兆し

政府ビルを狙った爆破事件、土地押収に抗議する焼身自殺──沸点を越えた民衆の怒りは本物の「ジャスミン革命」の引き金となりかねない

2011年6月14日(火)14時53分

我慢の限界 広州郊外で勃発した出稼ぎ労働者の暴動は3日間続いた(6月11日) Reuters

 広東州広州は中国の製造業を支える南部の一大工業都市。だが経済の急成長の陰で鬱積してきた労働者らの怒りはついに極限に達し、中国の安定を揺るがそうとしている。

 織物工場が集中し、中国全土から出稼ぎ労働者が集まる広州近郊の増城市で先週末、3日続けて出稼ぎ労働者による暴動が勃発。警察は催涙弾を使って何とか騒ぎを鎮圧したとされる。

 ことの発端は6月10日夜、露天の無許可営業を取り締まる治安当局が、露天商の妊婦に暴力を振るったこと。当局は女性に移動を求めたが話が折り合わず、女性を地面に押さえ付けたとされる。女性の夫の抗議に同調した労働者らと治安当局の小競り合いが暴動に発展。BBCによれば、5月12日夜には約1000人に膨れ上がったデモ隊が、車両に火をつけ、警察にレンガを投げつけ、政府関係の建物や警察車両を破壊。当局も催涙弾を発射し、武装車両を派遣して鎮圧に乗り出した。一連の暴動で少なくとも25人が逮捕されたという。

 今回の騒乱のニュースが世界中の注目を集めたのは、衝突を目撃した市民らがその様子を次々にネット上にアップしたため。ただし、中国の工業地帯ではこの数年、こうした労働者の反乱は珍しい話ではない。広東省潮州では先日、陶磁器工場で働く200人の出稼ぎ労働者が賃金支払いを求めて、政府系ビルを攻撃し、車両に火をつけた。

「周辺地域から出稼ぎに来る安い労働力を使って製造業の労働力不足を補ってきた経営者に対して、若い出稼ぎ労働者らが賃上げと待遇改善を求めている」表れだと、オンラインニュースサイト「グローバルポスト」のキャスリーン・マクローリン記者は指摘している。

 民衆の怒りが表面化するのは、暴動という形だけではない。中国では都市計画を急ピッチで進めるために住民を強制的に立ち退かせるケースが相次いでおり、家を奪われた人々による抗議の焼身自殺が相次いでいる。

中東革命の再来に危機感を強める当局

 当局が最も懸念を募らせているのは、政府機関を狙った度重なる爆破事件だ。5月末には、江西省撫州市で検察や市庁舎を狙った連続爆破事件が発生。天津市でも先週、男が爆弾を市庁舎に投げつける事件が起きたばかりだ。

 中国社会科学院によれば、中国では2006年に6万件以上だった「集団による事件」が07年には8万件以上に増加。大半は公務員の不正や環境汚染、低賃金などの不満を地方自治体の役人にぶつけるだけの小規模なデモだが、最近相次ぐ派手な騒乱は市民の怒りが沸点に達していることの表れだろう。

 中東や北アフリカ諸国で民主化デモを引き金にした体制崩壊が相次ぐ中、中国共産党は自身の支配体制が脅かされるリスクに極めて敏感になっている。7月1日に共産党創立90周年を控え、指導部の交代が来年に迫っているこのタイミングで国内が不安定化すれば、国際社会に対しても格好がつかない。
 
 今年春に中東から飛び火した「ジャスミン革命」は掛け声倒れに終わったが、中国に本当の意味での内部崩壊の危機が押し寄せるのはこれからかもしれない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

パウエルFRB議長巡る召喚状、地裁が差し止め 司法

ワールド

焦点:雪解けは本物か、手綱握りなおす中国とロシア向

ワールド

米、イラン新指導者モジタバ師ら巡る情報提供に最大1

ワールド

トランプ氏、イラン濃縮ウランのロシア移送案拒否 プ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのミュージカル入門
特集:教養としてのミュージカル入門
2026年3月17日号(3/10発売)

社会と時代を鮮烈に描き出すミュージカル。意外にポリティカルなエンタメの「魔力」を学ぶ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製をモデルにした米国製ドローンを投入
  • 2
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切りは常軌を逸している」その怒りの理由
  • 3
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド太平洋防衛
  • 4
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 5
    「イラン送りにすべき...」トランプ孫娘、警護隊引き…
  • 6
    『ある日、家族が死刑囚になって』を考えるヒントに…
  • 7
    有人機の「盾」となる使い捨て無人機...空の戦いに革…
  • 8
    「映画賞の世界は、はっきり言って地獄だ」――ショー…
  • 9
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 10
    謎すぎる...戦争嫌いのMAGAがなぜイラン攻撃を支持す…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 3
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」と言われる外国特派員の私が思うこと
  • 4
    「このままよりはマシだ」――なぜイランで米軍の攻撃…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、英連邦デー式典に出席...公開さ…
  • 6
    職業別の収入に大変動......タクシー運転手・自動車…
  • 7
    【長期戦はイラン有利】米側の体制転覆シナリオに暗…
  • 8
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 9
    ショーン・ペンは黙らない――「ウクライナへの裏切り…
  • 10
    世界の視線は中東から日本へ...企業主導で築くインド…
  • 1
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中