最新記事

カトリック

教会を悩ますゲイ聖職者の「乱れた性」

ローマの司祭たちのショッキングな「秘め事」をイタリアの週刊誌が暴露。教会は偽善体質を改められるか

2010年10月4日(月)16時47分
バービー・ナドー(ローマ支局)

 ローマ中心部のレストラン「レ・マーニ・イン・パスタ」。若いカップルがテーブルを挟んで見詰め合っている。手を握ったり口づけを交わしたりするわけではないが、明らかに単なる友人同士ではない。ただし、気になる点が1つある。服装は2人とも白いカラーに灰色のシャツ----カトリックの聖職者の証しだ。

 カトリック教会は同性愛を自然に反する罪深い行為としている。とはいえ、男性同士で愛をささやき合うゲイ聖職者の存在はローマでは公然の秘密であり、多くの市民が見て見ぬふりをしてきた。だが先ごろ、イタリアの週刊誌パノラマがショッキングな暴露記事を掲載すると、状況は一変した。

 ジャーナリストのカルメロ・アッバーテは、ゲイ聖職者グループに属するある人物の「パートナー」に成り済まし、ローマの聖職者3人の「秘め事」を20日間にわたりビデオにこっそり録画した。

 ビデオに映っていた司祭たちは秘密パーティーでセクシーなダンスを踊り、教会の敷地内で「男性コンパニオン」と性的行為に及んだ。ミサの時間ぎりぎりに暗いベッドルームから出てくる司祭たちの姿を捉えた動画もあった。「問題は同性愛ではない」と、アッバーテは本誌に語った。「建前の美徳と私生活レベルでの悪徳、そして教会の深刻な偽善だ」

 この暴露記事はローマのカトリック関係者に大きな波紋を巻き起こした。ただし同じ性的スキャンダルでも、世界中で明らかになっている聖職者による児童への性的虐待とは大きく違う。ゲイ聖職者は禁欲、教会法、偽善に関わる問題だし、小児性愛は児童虐待、権力乱用に関わる問題だ。

 ローマでは聖職者の大半がバチカン(ローマ法王庁)と何らかのつながりを持っている。アッバーテによれば、ビデオに映っていた司祭の1人はサンピエトロ大聖堂でミサを執り行っていたという。

問題は教会の秘密主義

 ローマ教区のアゴスティーノ・バリーニ枢機卿は声明でこう述べた。聖職者で同性愛者という「『二重生活』を送る司祭たちは自らの務めを理解していない。彼らは司祭になるべきではなかった」

 今年4月、法王庁のナンバー2に当たるタルチージオ・ベルトーネ枢機卿は訪問先のチリで会見を行い、性的虐待問題と絡めてゲイ聖職者を非難した。「多くの心理学者と精神科医によれば、禁欲と小児性愛は無関係だが、同性愛と小児性愛の関係を示唆する研究は少なくない。だから問題なのだ」

 まるで小児性愛のような「性的逸脱」よりも同性愛などの「性的志向」を問題視しているかのようだ。性的虐待の被害者をサポートする活動家はこうした傾向を批判する。教会は児童への性的虐待の噂があっても事実を隠蔽するのに、ゲイ聖職者に対してはすぐに聖職からの追放を口にする、と。

 レ・マーニ・イン・パスタからそう遠くないトラステベレ地区にある国際神学校には、世界中から入学希望の若者が集まってくる。この学校のある教授によると、彼らの圧倒的多数は性的に活発なゲイたちで、活力あふれるローマのゲイ文化にすぐなじむという。

 世界中にゲイ聖職者が何人いるのか、正確な数は分からない。00年の研究では、アメリカのカトリック司祭の最大60%は同性愛者だとされている。アッバーテによれば、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)でゲイであることを公言している司祭も少なくない。また取材の結果、聖職者は男性コンパニオンやバイセクシュアルの男娼の大切なお得意さまであることも分かったという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏のバッド・バニー批判、中間選挙

ビジネス

独VW、28年末までにコスト20%削減を計画=独誌

ビジネス

高市首相と会談、植田日銀総裁「一般的な経済・金融情

ビジネス

地盤ネットHD、井村氏が代表の会社と投資機能活用な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワートレーニング」が失速する理由
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活動する動画に世界中のネット民から賞賛の声
  • 4
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 8
    それで街を歩いて大丈夫? 米モデル、「目のやり場に…
  • 9
    フロリダのディズニーを敬遠する動きが拡大、なぜ? …
  • 10
    世界市場3.8兆円、日本アニメは転換点へ――成長を支え…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 8
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中