最新記事

ネット

サイバー犯罪の帝国は死なず

2010年2月15日(月)12時58分
ユリア・タラトゥタ、イゴール・イワノフ(ロシア版特約)

 迷惑メール問題に取り組む組織スパムハウスはカナディアン・ファーマシーを、サイバー犯罪で重要な役割を担っていると名指しで非難している。

 情報筋によると、カナディアン・ファーマシーは数十のオンライン薬局から成る医薬品販売ネットワークで、各薬局による注文の転送先は明らかにロシア系のウェブサイト。消費者に届ける薬はライセンス契約なしでインドで生産されたものだとみられている。注文者の電子メールアドレスは迷惑メール送信業者に売られている可能性がある。

 自称「ウクライナ・インターネット党」党首のドミトリー・ゴルボフのみるところ、世界全体の迷惑メールの70%は送信元をたどれば20〜25人から成るあるグループに行き着く。「メールアドレスのデータベースはカネになる」とゴルボフは語る。「例えば、アダルトサイトの有料会員のアドレスは100万人分で2万5000〜3万ドルになる」

 RBNの「後継」組織も本家と同じく逆風にさらされている。ホスティング事業者のマッコロ社(米カリフォルニア州)は08年11月、迷惑メールとDDoS(多くのコンピューターを乗っ取って標的のサーバーに攻撃を仕掛け、サービスの遅延・停止などを引き起こす手口)の拠点になっているとしてネットから締め出された。

国境など無いのも同然

 09年1月にはウクライナのウクルテレグループが、個人情報を盗むプログラムを開発したとの告発を受けて閉鎖に追い込まれた。

 それでもハッカーたちはRBNが死に絶えたとの見方を受け入れようとはしない。「RBNの手口は今でも十分に通用する」という声もある。

 国境はRBN流の犯罪を行う者に対して障壁の役割を果たせない。ロシアのコバリョフ議員はエストニアに対するサイバー攻撃に関して、発信元の60%がアメリカ、30%が中国でロシアは10%だと指摘した。しかしだからといって犯人がアメリカにいるとは限らない。

 ハッカーにとっては世界中が自分の庭のようなものだ。彼らはウイルスなどを利用して外国人のパソコンを乗っ取り、サイバー攻撃を行わせることができる。

 パソコンの防備を固めておかなければ、いつどこから犯罪の標的にされてもおかしくないということを肝に銘じるべきだろう。

[2010年1月20日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:ドル高の痛み、最も感じているのはどこか

ワールド

米上院、ウクライナ・イスラエル支援法案可決 24日

ビジネス

訂正-中国長期債利回り上昇、人民銀が経済成長見通し

ビジネス

米、競業他社への転職や競業企業設立を制限する労働契
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 7

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中