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ウクライナ

「オレンジ革命の悪役」勝利が意味するもの

2010年2月10日(水)18時22分
アン・アップルボム

「地政学」より「地理経済学」を意識して

 彼の評価はまさにこの点で決まる。ヤヌコビッチがNATO(北大西洋条約機構)参加を進めるか(これはないと思われる)、EU(欧州連合)と良好な関係を築くか(これはありそうだ)はウクライナ政治の未来にとってそれほど重要ではない。大切なのは国民がヤヌコビッチにノーを突きつけたいときに、選挙で彼を退陣させられるかどうかだ。

 もちろんヤヌコビッチの政策が重要でないというのではない。どんな国民もそうであるように、ウクライナ国民はどのような国家運営がなされるかを考えて未来のリーダーを選ぶだろう。

「いいかい、問題は経済なんだよ」というのはアメリカに限ったスローガンではない。ウクライナ政府は今後数カ月、「地政学」ではなく、ある専門家が言うところの「地理経済学」を一層意識していかなければならないだろう。

 まずはIMF(国際通貨基金)との関係を拡大していく必要がある。東にいる旧ソ連圏の隣人たちとは、ガス供給の安定化に向けて交渉を進める必要がある。西にいるヨーロッパの隣人たちとは、ビザ免除や貿易に関する協定を結ばなければならない。

 ウクライナの人々が必要としているのは、現実的で博識な政治家だ。特定のイデオロギーを信奉する政治家ではない。彼らのために、ヤヌコビッチが前者であることを祈ろう。

 ウクライナは最終的に「西の一員」になるのか、「東の一員」になるのか。つまり政治風土はヨーロッパ式になるのか、ロシア式をなるのか。次第にヨーロッパに取り込まれていくのか――こうした重要な疑問は、今回の大統領選で「東の」ヤヌコビッチが選ばれても消えていない。だが少なくともしばらくの間はおあずけになりそうだ。

*Slate特約
http://www.slate.com/

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