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北朝鮮

瀬戸際の将軍様と謎のプリンスたち

金正日の健康不安で切実さを増す後継者問題。最有力の三男・正雲ら息子3人の知られざる素顔を追う

2009年8月27日(木)16時41分
エバン・トーマス、スザンヌ・スモーリー、マーク・ホーゼンボール、ダニエル・ストーン(ワシントン支局)、横田孝(東京)、トレーシー・マクニコル(ベルン)、李炳宗(ソウル)

最有力候補 三男・正雲とされる写真。別人の可能性もある。手書きの文字は、金正日の元料理人だったという写真提供者のもの Reuters

 北朝鮮の政府は巨大な犯罪組織のようなものだと、世界の人々に思われている。統治者たちはアヘンを密輸出し、兵器や軍事技術の国際的な闇市場を通じてミサイルや核関連技術をシリアやパキスタンのような国に売り渡し、他国のパスポートや紙幣の偽造でも儲けているとされる。

 疑惑のなかには誇張されているものもあるのかもしれない。北朝鮮は中国製の偽米100ドル紙幣を世界中にばらまいているだけにすぎない可能性もある。

 しかし、北朝鮮の支配者に経済的なうまみがあることは間違いない。人口のおよそ3人に1人が栄養不良に苦しんでいるのを尻目に、統治者は黄金などの豊富な天然鉱物資源を有する400億ドル規模の経済をわが物にできる。

 いま最大の焦点は、この黄金が誰の物になるかだ。北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記(67)は体調がすこぶる悪いらしい。08年夏に脳卒中の発作を起こしたとされており、加えて癌も患っている可能性がある。めったに公の場に姿を現さず、たまに登場したときは衰弱しもうろうとしているように見える。

 北朝鮮ではあらゆることがやぶの中だ。金の健康状態についても確かなことは分からない。情報機関関係者の間でも見方が分かれている。一般に言われているほど病状は重くないと主張する情報機関関係者もいる(機密情報であることを理由に匿名を希望)。

 それでも、金が3人の息子のうちの1人にどうやって権力を継承させるか頭を悩ませていることは確かなようだ。

 3人の息子の誰一人として、父親の地位を引き継ぐ準備ができているようにはとうてい思えない。金の息子たちはイラクのサダム・フセインの悪名高い息子ウダイとクサイのようなわがままなサディストというより、父親の(エキセントリックではあるがさほど罪のない)欧米カルチャー好きな一面を受け継いでいるように見える。

 映画愛好家として有名な金は、来客に2万本の映画コレクションをよく自慢している。お気に入りの映画スターはアクション俳優のジャン・クロード・ヴァン・ダムだという。では息子たちの好きなものはというと、アルマーニの服に、NBA(全米プロバスケットボール協会)のスター選手、ギタリストのエリック・クラプトン、それにディズニーランドだ。

 3人に共通するのは、自分の「血筋」をしっかり意識していること。北朝鮮の体制では、この点こそが権力の源だ。

長男と次男は既にレースから脱落?

 世襲支配体制の始祖である「偉大なる指導者」こと金日成(キム・イルソン)は、第二次大戦中に日本と、朝鮮戦争中にアメリカと戦うことを通じて統治者としての正統性を獲得した。

 その息子の「親愛なる指導者」金正日は何十年もの見習い期間を通じて、政敵を追い落とす方法を学んでいった。異母弟の金平日(キム・ピョンイル)を大使としてヨーロッパに左遷したこともある。94年に父・金日成が死去した数年後には、「先軍政治」の思想を打ち出して権力基盤を強化。軍の幹部たちに外国製の高級腕時計や高級車をプレゼントしたことも権力掌握に役立った。

 金正日の3人の息子のうち少なくとも1人は、スイスの上流層向け私立校で教育を受けている。92年秋、スイスの首都ベルンにあるベルン・インターナショナルスクール(ISB)に2人の男の子がやって来た。数分の距離しか離れていない北朝鮮大使館からリムジンで送られてきた2人は4年生のクラスに編入したが、実際はもう少し年上に見えた。

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