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ドイツ首相

冷淡メルケルとオバマの共通点とは

2009年8月4日(火)14時25分
マイケル・フリードマン

クール オバマに似て感情に流されないメルケル Reuters

 なぜドイツのメルケル首相は他国の指導者に我慢ならないのか。サルコジ仏大統領に食ってかかり、ブラウン英首相の好評な景気刺激策を「無益な浪費合戦」と批判する。ドイツ人が大好きなオバマ米大統領にも好意を示さない。

 彼女の冷淡な態度はドイツの外交政策の延長線上にある。冷戦後、ドイツはアメリカから距離を置き、国益を重視するようになった。イラクやアフガニスタンのような軍事面でも、今回の世界経済危機への対応でもそれがうかがえる。それに歴代首相と違い、メルケルは旧東ドイツの物理学者として政界の外でキャリアを積んだ。そのため外交スタイルはビジネスライクで、べたべたしていない。

 彼女は9月の総選挙を控えていっそう慎重になっていると、米シンクタンク「ジャーマン・マーシャルファンド」のトーマス・クライネブロックホフは言う。
「世界の騒ぎには簡単に乗らない」

 だから、ブレア前英首相がEU大統領になるべきかどうかについても、今のところ沈黙を守っている。オバマに対して冷めているのは、若い彼の実力を品定めしているのだろう(年上であるブッシュ前米大統領には敬意を表していたらしい)。

 オバマとの絆は今後強まるかもしれない。2人とも現実主義者で、経済危機の対応などで各国が国益をめぐって対立しかねないことを認識している。そして2人とも感情に流されない。心でなく頭脳でつながることはあり得るだろう。

[2009年8月 5日号掲載]

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