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アハマディネジャド再選に黄信号

6月12日のイラン大統領選で再選を目指すアハマディネジャドに、体制内部からも批判が高まっている。イラン革命防衛隊のベテラン隊員が本音を明かしてくれた。

2009年6月5日(金)16時20分
マジアル・バハリ(テヘラン支局)

崖っぷち ナショナリスト的な発言で大衆の心をとらえてきたアハマディネジャドだが Morteza Nikoubazl-Reuters

(本誌「ニューズウィーク日本版」6月10日発売号にイラン特集を掲載する予定です)


「6月12日にはムサビに投票する」と、アリは言った。

 ミルホセイン・ムサビは、12日に行われるイラン大統領選で、再選をめざす現職マフムード・アハマディネジャドの強力な対抗馬だ。

 アリが学生活動家や改革派の政治家だったら、さほど驚く発言ではない。だがアリは、1980年代からイラン革命防衛隊に所属してきた52歳。取材に応じることを禁じられているため名字は明かさないが、自分がムサビを支持する理由を世界に伝えたいと願っている。

「現政権は(1978年の)革命以来、最悪の政権だ」と、アリは言う。「この4年間、アハマディネジャドは世界におけるイランのイメージをぶち壊し、経済も破壊した」

 本誌はイラン政府による非公開の世論調査の結果を入手した。それによれば、アリと同じく、この数週間の間にムサビ支持を決めた国民が何百万人もいる。しかも、革命防衛隊や情報当局の関係者の間でムサビ支持の割合が高い。

 年配の人たちはイラン・イラク戦争(80~88年)の厳しい時代に首相を務めたムサビを覚えている。彼らの多くは再び戦争が勃発すれば、国を守るために戦う立場にいる。
 

ばらまき政策でインフレに

 05年の大統領選では、アリはアハマディネジャドに投票した。対抗馬が、89~97年に大統領を務め、政界の中枢に居座り続けるハシェミ・ラフサンジャニだったからだ。

 元テヘラン市長のアハマディネジャドは、ラフサンジャニとその取り巻きを腐敗の温床と非難し、国民の声に耳を傾ける堅実な政府をつくると約束。1700万票を獲得して大統領に就任した。

 就任後3年間の業績は素晴らしかった。原油高騰のおかげでイランの石油には1バレル当たり150ドルの値がついた。アハマディネジャドは国内を回り、貧困層にパンやカネを配った。核開発を行う権利を主張するナショナリスト的な演説も、大衆の支持をあおった。

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