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スリランカは戦争を選ぶ

LTTEとの内戦を武力で解決することを強硬派は目指すが、問題の全面解決には政治的戦略が欠かせない

2009年5月19日(火)16時02分
ジェレミー・カーン

内戦の生傷 コロンボ近郊で爆破されたバス(08年4月26日)。反政府組織LTTEの仕業とされる Anuruddha Lokuhapuarachchi-Reuters

[2008年5月21日号掲載]

 4月25日、スリランカのコロンボ近郊のバスターミナルで、大勢の乗客を乗せたバスが爆発。26人が死亡、60人以上が負傷した。

 悲劇の背景にあるのは、泥沼化した内戦だ。反政府組織タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)は過去25年間、少数派タミル人(人口2000万人の約5分の1を占める)が多い北部と東部の分離独立を求め、政府軍と戦闘を繰り返してきた。これまでに7万人余りが死亡し、和平の試みは何度も頓挫してきた。

 しかし最近、事態に変化がみられる。政府軍は掃討作戦を開始し、過去1年半でLTTEが支配する9地区のうち東部の7地区を奪還。空爆で幹部2人を殺害した。アメリカ、EU(欧州連合)、インド、オーストラリアによるLTTEの資金・武器調達ネットワーク取り締まりも奏功している。「内戦は武力では解決できない」という通説が揺らぎはじめた。

 最近、安全保障分野で主流になりつつあるのが「勝利による和平説」。内戦がどちらかの軍事的勝利で終わると、和平交渉で決着する場合より平和が長続きするというもので、スリランカはこのテストケースとして注目されている。

軍事費増大で財政難に

 作戦の中心にいるのがマヒンダ・ラジャパクサ大統領だ。05年に、対LTTE強硬派のシンハラ人仏教政党の支持を得て大統領になった(スリランカの内戦には多数派で仏教徒中心のシンハラ人と、ヒンドゥー教徒中心のタミル人の宗教対立という側面もある)。国際社会のテロ包囲網強化や、幹部が政府側へ寝返ったことなどからLTTEが弱体化していると察したラジャパクサは昨年、いちかばちかの賭けに出た。

 08年末までにLTTEを壊滅させると誓い、国防予算を2倍の15億ドル(GDPの約5.8%)に増額。軍の再編により兵力を4万人増強し、5個師団を新設。軍人の給与は2倍に引き上げられた。

 しかし、LTTEは今も5000人の兵力を維持する深刻な脅威だ。政府軍は北部ワンニ地域の攻略に苦戦。ムハンマライ近郊では4月下旬、LTTEの待ち伏せ攻撃で政府軍兵士43人が死亡した。テロも激化し、1月以降、自爆テロで政府高官2人が殺されている。赤十字国際委員会(ICRC)によれば、年初の6週間で180人の市民が死亡した。

 政府の焦燥感はつのる一方だ。掃討作戦で財政は逼迫し、29%という記録的インフレを招いている。5月5日にはスタンダード&プアーズ(S&P)が、歳出を抑えなければスリランカの信用格付けを引き下げると警告した。

 武力作戦の終結と和平交渉再開を迫る国際圧力も高まっている。内戦における人権侵害を懸念するアメリカは、経済援助を削減。EUも後に続く可能性がある。

 それでも「LTTEのトップを殺せば構図は一変する」と、欧米のNGO(非政府組織)のあるアナリストは言う。あるいは、政府軍が年内に重要な勝利を収めれば、シンハラ人は作戦続行を支持するだろう。そのため、6月に雨期が始まる前に政府軍は再攻勢をかけると専門家はみている。

武力だけでは解決しない

 最も理想的なのは、軍事作戦と合わせて、タミル人穏健派に権限を与えてLTTE離れをあおることだ。ほとんどのタミル人は自治拡大は求めているが、LTTEの訴える分離独立には反対している。

 87年のインドとの和平協定に基づき、スリランカは地方に権限移譲する憲法修正案を採択している。しかしLTTEが武装解除を拒否したため、タミル人地域ではこれまで実現しなかった。

 ラジャパクサはその是正を約束しているが、懐疑的な声は多い。5月10日に東部州で実施された地方選挙で、与党はLTTEの分派であるカルナ派の政党と手を組んだ。そこにカルナ派の傀儡(かいらい)体制をつくり、権限移譲したと主張するつもりだろうとみる向きもある。

 この差別解消に本気で取り組まないかぎり、軍事作戦は成功しないだろう。戦闘だけでは「全面解決は不可能だ」と、米国平和研究所のスーザン・ヘイワードは言う。

 残念ながら、強硬派に囲まれたラジャパクサがタミル人に歩み寄ることはないだろう。内戦が武力で解決できるとしても、それは本当の答えではないはずだ。

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