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「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「フリーランス精子」市場に女性が殺到する理由

A PERSONAL JOURNEY

2024年05月09日(木)17時20分
メレディス・ウルフ・シザー(本誌記者)

バレリー・バウマンの妊娠

COURTESY VALERIE BAUMAN

──ドナーが養育費を請求される可能性など、ドナーとレシピエントの間で法的保護のバランスをどのように取ればいいか。

だからこそドナーを選ぶ段階でお互いをよく知って、ある程度の信頼関係を築かなければならない。最善の策は、生殖補助医療(ART)を専門とする弁護士に依頼して契約書を作成することだ。

もう1つの予防策は、匿名でないドナーの精子を使ってクリニックで人工授精を行うことだ。ただし、大半のクリニックは精子の凍結と隔離が必要なため、何千ドルという本来なら不必要な費用がかかる。

匿名でないドナーが「性的に親密なパートナー」である場合にクリニックでの処置を認めるという米食品医薬品局(FDA)のガイドラインについて、より自由な解釈をするクリニックが増えるように、「フリーランス精子」の世界が後押しするのを望んでいる。

より進歩的なクリニックでは、誰かの精子が過去にレシピエントの体内に入ったことがあれば、それが人工授精でも、性的に親密なパートナーと見なす。つまり自宅で人工授精を1回行えばFDAのガイドラインをクリアして、クリニックで新鮮な精子(凍結精子よりはるかに好ましい)を使用できる。

──規制のない精子市場は、何らかの理由で従来の医療制度では十分なサービスを受けられない人にとって、良い選択肢だろうか。

私はフリーランス精子の市場を非難も推奨もしない。全ての人に適しているわけでもない。でも現実に起きていることであり、多くの人が実行可能な選択肢だと考えている。

世界中で、それがなければ存在し得なかった家族をつくる手助けをしているのだ。従来の医療制度が破綻しつつあり、親になりたい人を経済的に追い詰めているということを物語っている。

──養子縁組で親になる人々と、規制のない精子市場を利用して妊娠する人々の双方の状況を改善するような方法があるだろうか。

養子縁組を希望する人々は膨大なお役所の手続きを乗り越えなければならず、それは親になりたい人々がフリーランス精子の市場で直面する問題とは全く異なる。社会が家族についての考え方や定義を大きく変えない限り、両者の状況を改善する明白な解決策は見つからないだろう。

──(受精卵を凍結保存した凍結胚を「子供」と見なすという)2月のアラバマ州最高裁の判決の影響は。

判決後、胚移植や採卵のキャンセルが始まっている。既に胚を作成している人も、移植が可能な州まで胚を輸送する業者が見つからない。こうしたことは、より多くの人々を規制のないフリーランス精子の世界へと追いやることになる。

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