最新記事

LGBT

「同性婚合法化」国民投票が迫るスイス 直接民主制の人びとが選択するのは?

2021年09月24日(金)18時40分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)
女性同士のカップルによる結婚式のイメージ

*写真はイメージです。LumiNola - iStockphoto

<同性婚についての対応が国によって分かれる欧州。スイスでは最終的に国民投票で決着することに──>

西ヨーロッパの多くの国で、同性愛者の婚姻が認められている。だが、スイスには、名字や年金や納税などの権利・義務が異性婚と同じになるパートナーシップ制度があるだけだ。国内の同性愛者たちの「なぜ法的に結婚できないのか」という不平等感は高まっており、その不平等を解消しようと、議論の末、スイスの議会は民法改正案を可決した。しかし、これに反対する人たちが多数現れ、合法化は国民投票で問われることになった。投票は、9月26日に実施される。

国内で、精子提供も可能になるか

西ヨーロッパの国で同性愛者に対してパートナーシップ制度しかもたないのは、ギリシャ、イタリア、リヒテンシュタイン、そしてスイスの4カ国だ。スイスでは、2018年より、家族内での養子縁組(パートナーの子どもと養子縁組)は可能だが、ほかの多くの西ヨーロッパ諸国が認めている「他人の子どもとの養子縁組」「生殖補助医療の利用」はできないし、「子どもの誕生時から同性の両親を親として承認」もしてもらえない。

生殖補助医療の利用とは、女性カップルが国内で精子提供を受けることだ。フランスでは、女性カップルが国内で精子提供を受けられる法案が6月に可決されたばかりだ。一方、男性カップルが子をもつハードルはまだ高く、ヨーロッパ諸国の多くは国内の代理出産や卵子提供を禁止している。現在、スイスでは、女性カップルで精子提供を受けたい場合は国外へ行くしかない。男性カップルの場合も、国外での代理出産だ。

スイスにおいて、これらの不平等が解消されることになるかもしれない。スイス政府が同性婚を合法化し、国内で精子提供を受けることやほかの権利も与えることにGOサインを出したからだ。だが、国民投票で否決されれば本法律は施行されない。

そもそも国民投票とは?

この同性婚法「すべての人に結婚を」が国民投票にかけられるのは、スイスが直接民主制の国だからだ。政府の決定に対し、国民の意見を反映させることができる。国民投票するには、一定の署名を集めることが必須だ。スイス国民はこの制度を利用して、生活にかかわる議題を定期的に国民投票で審議している。今回は同性婚ともう1件ある。前回は6月に実施され、化学農薬使用の全面禁止政策、Covid-19法、改正CO2法(温室効果ガスの排出削減に関する連邦法)を含む5件だった。

今回の同性婚法「すべての人に結婚を」は2020年12月に議会で可決され、保守系の2つの党が中心となって同法に反対するための委員会「Nein zur Ehe für alle」を作った。委員会は国民投票実施のため6万1027の有効署名を集めることができた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…

  • 2

    解剖学者「セルライトは消せない」と断言...悪いイメ…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    最重要は「2度洗い」⁈ SNSで話題のヘアケア「本当の…

  • 1

    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…

  • 2

    出産間近!ヨルダン・ラジワ皇太子妃が「ロングワンピ…

  • 3

    メーガン妃の「狂気的なオーラ」が注目を集める...そ…

  • 4

    酔った勢いで彫った「顔のタトゥーは似合わない」...…

  • 5

    見落とされがちな「女の子のADHD」15の徴候とは?

  • 1

    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…

  • 2

    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    ルイ王子の「お行儀の悪さ」の原因は「砂糖」だった.…

  • 5

    キャサリン妃は「ロイヤルウェディング」で何を着た…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ暗殺未遂

特集:トランプ暗殺未遂

2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃