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SATCの幻想で期待した映画『デッドリー・イリュージョン』だったが...

Netflix’s Bizarre New Thriller

2021年04月16日(金)18時52分
ヘザー・シュウィドル(スレート誌記者)
映画『デッドリー・イリュージョン』

人気作家のメアリー(右)は美女グレース(左)をベビーシッターに雇うが、その日を境に何かが狂い始める NETFLIX-SLATE

<『セックス・アンド・ザ・シティ』でシャーロット役を演じたクリスティン・デービスが主演した官能スリラーは、ここが残念>

近頃ネットフリックスは大量のコンテンツを配信していて、何が出てくるか見当もつかない。それでも映画『デッドリー・イリュージョン』のことを配信開始前に知ったら、興奮したに違いない。ジャンルは官能スリラー、主演はクリスティン・デービス(『セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)』のシャーロット)とくれば、それだけで飛び付いたはず。実際、配信が始まったその週に視聴回数1位に輝いた。

トップ10入りする作品は変わり種ばかりだから、この人気ぶりから自分には合わないかもしれないと気付くべきだった。見終わった今は、いい作品かもと期待したこと自体、イリュージョン(幻想)だったと断言できる。

「致命的な幻想」という意味のタイトルは何を指すのか。なぜ視聴回数1位に? この映画について押さえておきたいポイントをまとめてみた。

■基本のプロット

デービス演じるメアリーは豪邸に暮らす人気ミステリー作家。当分は執筆の予定はなく、自宅をぶらぶらしたり、双子の娘たちと夫の世話を焼いたりする毎日だ。

ところが夫のトム(ダーモット・マローニー)が資産の半分相当の金を失ったと告白。メアリーは前払い金200万ドルと引き換えに新作を書くことを決意する。自分の代わりに双子の娘たちの世話をしてくれる人を探すため、ベビーシッター紹介サービスに登録し、グレースという20歳前後の美女を雇う。グレースは天使のように清楚に見えたのだが......。

■プロット以外

プロットは悪くなさそうだが、展開が行き当たりばったりで、作品の可能性を大きく損なっている。トムが大金を失った理由について正確なことは謎のまま。出版社の担当者から新作を書いてほしいと言われ、メアリーはなぜかキレる。妙なことだらけだが、気にしてはいけないらしい。

一番ひどいのはメアリーの友人エレーン(シャノーラ・ハンプトン)の扱いかもしれない。最後までお決まりの報われない「黒人の親友」止まりで、(以下ネタバレ注意)理不尽に殺されて終わりだなんて! 誰にも彼女を殺す動機がないのに。こんな調子で脚本がずさんだったり、不可解だったり。時間軸も難解だ。

■ベビーシッター

グリア・グラマー(俳優ケルシー・グラマーの娘)が演じるグレースは、登場初期は無垢で理想的なベビーシッターだ。映画ではプリーツのミニスカート、お下げ髪にリボンというお人形のような格好でそれを表現している。

最初は1週間の契約だったが、3日目くらいにメアリーは彼女を連れてブラジャーを買いに行く。その2、3日後にグレースはこの家でベビーシッターをすることになったのが自分の身に起きた最も重要な出来事だと言い切る。今までこんなに愛されていると感じ、何かの一員だと感じたことはなかった、と。ここで言わなくても、もっといいやりようがあったはずだが、要はそれほど思い詰めているということだ。

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