最新記事

英国でビーガンが急増、しかし関係者からも衝撃的な発言が相次いでいる

2019年09月06日(金)15時45分
松丸さとみ

脳に必須の「コリン」をめぐる議論勃発

さらに8月末、「ビーガン食では脳が必要とする栄養素を十分補えない」という主旨の論文が発表された。英ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル系列の医学誌「栄養、予防&健康」(電子版)に掲載されたもので、英国で栄養や健康に関するコンサルタント業を営むエマ・ダービーシャー博士が書いたものだ。

ダービーシャー博士によると、コリンは神経伝達物質合成や細胞構造などに必須の栄養素で、肝臓で作られてはいるものの十分ではなく、食物として摂取して補う必要がある。不足すると、肝臓病や神経系の病気になる可能性がある他、妊婦がコリン不足になった場合、胎児の認知機能に障害が出る可能性もあるとしている。英国では食事ガイドラインなどにコリンを含めておらず、なぜコリンの重要性がこれほどまでに見過ごされてきたのか、と同博士は英国政府の対応に疑問を投げかけている。

論文では、一般的に牛肉や卵、魚、鶏肉、ナッツ、牛乳、そしてブロッコリーなどのアブラナ系の野菜にコリンが含まれているとしている。しかし含有量を表したグラフを見ると、牛のレバー、卵、牛のステーキ、鮭などに多く含まれ、全体的に植物性食物よりも動物性食物に多く含まれているのが分かる。

しかしビーガン協会は、ダービーシャー博士のこの論文を受けて声明を発表し、同博士の主張を完全否定した。同協会は、英国栄養士協会が発表した「ビーガンや植物由来の食生活で十分(コリンの)必要要件を満たすことができる」という言葉を引用し、妊婦や子どもを含む誰にとっても、ビーガン食は健康的な生活を支援するものだと書いた。

ビーガン協会はまた、「コリンは大豆やキヌア、ブロッコリーなど植物由来の食物に広く含まれている」というビーガン協会の栄養士ヘザー・ラッセル氏の見解を紹介している。ラッセル氏は、「完全菜食主義に切り替えた場合でも、あまり加工されていない食物をバランス良く食べれば、コリンのサプリメントを飲む必要などない」と同協会に話したという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の

ビジネス

LSEG、第1四半期収益は予想上回る 市場部門が好

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    タンポンに有害物質が含まれている...鉛やヒ素を研究…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 1

    アメリカ日本食ブームの立役者、ロッキー青木の財産…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 4

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 5

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門

2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語