最新記事

アメリカ経済

オバマの雇用対策は時代錯誤

雇用回復を柱に3000億ドルの景気刺激策を発表する予定だが、その内容には早くも失望と反発が広がっている

2011年9月8日(木)16時33分

GM本社を背に オバマは米自動車産業の本拠地デトロイトで雇用回復を誓った(9月5日) Jason Reed-Reuters

 バラク・オバマ米大統領は8日、米議会の上下両院合同会議を前に3000億ドルの景気刺激策を発表するとみられている。

 ブルームバーグによればその目玉には、減税やインフラ事業への支出、州や自治体への直接的な補助金が含まれることになりそうだ。


 オバマは議会に対して、雇用対策の短期的なコストは将来の税収増で賄うと説明するだろう。税収増を実現するのは、政府支出や福祉等の給付金削減、歳入増などによる長期的な財政赤字削減策だ。オバマは来週、議会の政府債務削減の専門委員会にこの赤字削減案を提案する。


 3000億ドルの約半分は、12月31日に期限が来る労働者が支払う給与税減税の延長分と、雇用主が負担する給与税に対する新たな減税からなる。

効果のなかった政策の繰り返し

 CNNは、この提案に対する議会の反応は「余りよくないだろう」と指摘している。


 共和党員の中には、彼らが失敗だったと捉えているオバマの09年の景気対策の繰り返しに過ぎないと、すでに拒否反応を示している者もいる。


 CNNによれば、この包括的な景気対策案には、失業中の人を雇った雇用者の税額控除や失業保険給付期間の延長なども含まれる。

 オバマの演説は、予想以上に結果の悪かった8月の雇用統計の発表から数日しか経っていない中で行われる。統計では失業率は9.1%で横ばいだった。

 オバマは5日のレイバー・デー(労働者の日)に行われた演説で、「両党(民主党と共和党)が一緒に問題を解決できると信じる」と言い、超党派で合意できる雇用回復策を提案すると語った。

 共和党の大統領選指名を目指すミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事は6日、自身の景気対策案を明らかにし、演説や160ページからなる『ビリーブ・イン・アメリカ(アメリカを信じよう)──ミット・ロムニーの雇用と経済成長計画』というタイトルの本で、その案について説明した。ロムニーは、オバマの経済戦略を「スマートホン時代の公衆電話戦略」のように時代錯誤だと指摘している。

GlobalPost.com 特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB金利は適切な水準、インフレ低下は一時的=シュ

ワールド

インド西部で離陸直後市街地に墜落、死者多数 英国行

ビジネス

独主要シンクタンク、25年成長率を上方修正 財政拡

ワールド

IAEA理事会、イラン非難決議採択 イランは対抗措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 2
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 5
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 6
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 7
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 8
    【クイズ】今日は満月...6月の満月が「ストロベリー…
  • 9
    みるみる傾く船体、乗客は次々と海に...バリ島近海で…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット騒然の「食パン座り」
  • 4
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 9
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中