オバマの暗殺リスクは意外と低い?
反米テロリストや人種差別主義者からの脅迫が殺到したのは過去の話。最近のオバマ大統領は歴代大統領より安全かもしれない
蘇る悪夢 11月5日、フォートフッド基地で起きた銃乱射事件は政府要人や軍に対するテロの恐怖をあらためて思い起こさせた Reuters
11月5日に米テキサス州のフォートフッド陸軍基地で起きた銃乱射事件の容疑者は、イスラム教徒の軍医だった。この事件を機に、政府関係者や軍事施設に対するテロへの懸念が再び高まっている。
もっとも、バラク・オバマ米大統領の警護を担当するシークレットサービスに言わせれば、大統領への脅迫はこの数カ月、著しく減少しているという。
今年8月にシークレットサービスに関する著書を出版したロナルド・ケスラーによれば、ジョージ・W・ブッシュ前大統領が在任中に受けた脅迫は年間3000件。オバマの大統領就任以降、その数は400%増加しているという。
ケスラーの報告を分析した英デイリー・テレグラフ紙によれば、オバマは毎日30件の暗殺予告を受けている計算になる。3月にはシークレットサービスの責任者マーク・サリバンが下院歳出小委員会で、警護対象者への脅迫は「引き続き高い水準で続いている」と証言した。
だが、シークレットサービスの広報担当者エド・ドノバンの主張は違う。彼はニューズウィークに対し、オバマの暗殺リスクが際立って高いという見方は古いデータに基づいていると語った。
ドノバンによれば、シークレットサービスが把握しているオバマへの脅迫件数は、昨年11月の大統領選前後と今年1月の大統領就任前後に「急増」したが、その後は相当減少している。就任後の平均件数はブッシュやビル・クリントンの在任中と同じ水準で、最近に限ればブッシュとクリントンより少ないほどだという。
大物テロリストが沈黙する理由
シークレットサービスがこれほど詳細に、大統領の暗殺リスクを論じたことは過去になかった。だが、誤解が広まっている現状を懸念して情報を公開することにしたと、ドノバンは言う。
これに対し、ケセラーはニューズウィークの取材に対して「脅迫件数は増えたり減ったりするが、平均400%増は正しい数値だ」とメールで反論。「大統領への脅迫が増えているにも関わらず、シークレットサービスは自身の力不足を隠し、メディアに嘘をついている」。