最新記事

アメリカ政治

共和党の闘犬ペイリンの自伝の価値

回顧録『ならず者として生きる』が予約販売でベストセラー入り。この本の出版契約で、お騒がせペイリンはいくらと値付けされたのか

2009年10月28日(水)18時39分
ホリー・ベイリー(ワシントン支局)

自称ピットブル 訴訟にも批判にも負ける気なし(アラスカ州知事辞職直前の7月26日、同州フェアバンクスのイベントで) Nathaniel Wilder-Reuters

 サラ・ペイリンの回顧録『ゴーイング・ローグ(ならず者として生きる)』は、11月17日の発売前からアマゾン・ドット・コムの販売上位3位に入る人気ぶり。本の発売に合わせて、テレビ出演や講演活動を再開する予定だ。

 08年の大統領選で共和党の副大統領候補だったアラスカ州前知事のペイリンが、この本の手付金として1100万ドルを要求したという噂を覚えているだろうか。結局、そんなにはもらえなかった。

 このほど公開された収支報告書によると、ペイリンは自著の前金として125万ドルを受け取っている。今回の報告書の対象期間は09年1月1日から、ペイリンが州知事を辞職した7月26日まで。

 これは他の大物政治家と比べて多いのか、少ないのか。ローラ・ブッシュ前大統領夫人の回顧録の契約料は160万ドルだったと伝えられる。夫のジョージ・W・ブッシュ前大統領が、大統領として下した最も難しい決断を明かす本には前金で700万ドルが支払われたという噂。

 ヒラリー・クリントン国務長官の自伝は前金が800万ドル。だが誰より高く売れたのは夫のビル・クリントン元大統領で、『マイライフ クリントンの回想』には1500万ドルの前金が支払われた。ペイリンと彼らに共通しているのは、ワシントンの豪腕弁護士ボブ・バーネットが代理人を務めていることだ。

 この夏ペイリンが知事を辞めたとき、辞職の理由の一つに訴訟費用を払うための金を稼ぐ必要があったのではないかと言われた。彼女は在職中、州の倫理規定に違反したとして数々の訴訟を抱えている。負債額は不明だが、ペイリン自身も「誤った批判と戦う」ために自宅を担保に融資を受けたと報告している。その金額は不明だ。

もらえるものは何でももらう

 では収入のほうはどうか。今年知事を辞めるまでの7カ月半で、ペイリンは7万3000ドルの報酬を受け取った。他に一日6371ドルの必要経費も使えた。夫のトッド・ペイリンは同時期、勤め先だった石油大手BPからの報酬で3万4086ドル、自分の水産会社から3万2260ドルの収入を得ている。サラは、マーケティング会社パイ・スパイを立ち上げたが、まだこの会社からの所得は報告されていない。

 だが、実入りはそれだけではない。副大統領候補に選出されてから、衣装代や美容代15万ドルを共和党に請求したペイリンのこと、ただでもらえるものは何でももらう。

 収支報告書によれば、ペイリンとその家族は4万3000ドルを超える贈り物をもらっている。旅行、宝石、芸術品、スポーツ用品、そして衣装。前ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニからはニューヨーク・ヤンキースの観戦チケットを4250ドル相当、ニュースキン社からは基礎化粧品2666ドル相当、大手銃器メーカーのルガー社からはアラスカ拳銃、そしてキリスト教伝道師のフランクリン・グラハムからは1664ドル相当の航空券......。 

 トッドのほうも、十代の青少年に禁欲を説くキャンディ基金から2000ドルの旅行や宿泊代を出してもらっている。ペイリンの娘ブリストルは、キャンディ基金で広報担当を務めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

仏首相、年金改革を27年まで停止 不信任案回避へ左

ビジネス

米ウェルズ・ファーゴ、中期目標引き上げ 7─9月期

ビジネス

FRB、年内あと2回の利下げの見通し=ボウマン副議

ビジネス

JPモルガン、四半期利益が予想上回る 金利収入見通
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 4
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 5
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 6
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 7
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 8
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 9
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 10
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中