zzzzz

最新記事

米政治

アメリカにはびこる「嫌欧症」の愚かさ

医療保険改革を「ヨーロッパ化」と呼びオバマをヒトラーになぞらえる右派の攻撃が、論争の本質を見誤らせる

2009年9月17日(木)15時17分
マイケル・フリードマン

アメリカの右派はバラク・オバマ大統領の就任後、この政権はわが国をヨーロッパのような「社会主義体制」にするつもりだと非難してきた。だが、いったいヨーロッパの何が悪いというのだろう?

 EU(欧州連合)諸国はアメリカより乳児死亡率が低い。特にフランスはEU圏でトップだ。例えば明日アメリカで生まれた男の子の平均余命は78歳。大半のEU諸国で生まれた男児はそれより1年、フランス生まれならさらに2年は長生きできる。

 OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、アメリカ右派の言う「社会主義のヨーロッパ」で生まれた男の子は、大きくなってからも幸せに暮らせる可能性が高い。小学校から大学まで、教育は基本的に無料。卒業後は世界的な大企業に入社できるチャンスがある。石油業界の大手のうち3社(BP、ロイヤル・ダッチ・シェル、トタル)、通信機器の大手2社(ノキア、エリクソン)、売上高でみた世界の10大企業のうち4社は、ヨーロッパの会社だ。

 バケーションもアメリカより長い。病気の療養や子育てのための休暇も多く取れる。きちんとした治療を受けられるチャンスも大きい。高齢者になったら、公的年金が生活の面倒を見てくれる。

 それでもアメリカの右派は、オバマとヨーロッパを非難し続けている。FOXニュースの看板キャスター、ビル・オライリーに言わせれば、ヨーロッパは「臆病者」の集まりだ。トーク番組の人気司会者ショーン・ハニティは、オバマ政権の景気刺激策を「ヨーロッパ式社会主義法」と呼んだ。

 ハニティと並ぶトークショーの人気司会者ラッシュ・リンボーは、こう主張した──オバマがやろうとしている医療保険制度改革の支持者は、国家反逆罪ものの反アメリカ的陰謀に加担する者たちだ。連中の狙いはアメリカを「ヨーロッパ型の社会福祉国家」に変えることにある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

シーインがロンドン上場へ目論見書準備、評価額500

ビジネス

5月の中国新築住宅価格、9カ月連続で上昇 支援策が

ワールド

韓国5月輸出は11.7%増、8カ月連続プラス 半導

ワールド

南ア大統領、主要政党に協力呼びかけ 与党過半数割れ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 4

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 5

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 6

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 7

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 8

    「娘を見て!」「ひどい母親」 ケリー・ピケ、自分の…

  • 9

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 10

    中国海外留学生「借金踏み倒し=愛国活動」のありえ…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中