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ジョージ・W・ブッシュ流、第2の人生の探し方

2009年7月17日(金)15時00分
ビル・ミヌタリオ(テキサス大学教授)

いつか歴史に変わるまで

 ヒックスは、かつてブッシュを含む投資家集団からテキサス・レンジャーズを買い取った人物。今回も、自宅の隣にブッシュ家が落ち着けるよう力添えした。近所にはチタン関連の世界的企業を率いるハロルド・シモンズもいる。04年の大統領選で、民主党候補ジョン・ケリーの軍歴を中傷するCMを流した黒幕とされる人物だ。ブッシュに地盤と金脈と人脈を提供してくれた人たちと、ブッシュはようやく「ご近所」になれた。

 テキサス州共和党のフレッド・メイヤー元委員長は16年前に、1期4年でホワイトハウスを去った父ブッシュ(第41代大統領)をヒューストンの空港で迎えた。

 「出迎えはあまりいなかった」とメイヤーは言う。景気の低迷で、すっかり人気を失っていたからだ。それでも任期を終える頃には、支持率も56%まで回復していた。長い政治家人生で得た多くの友人に励まされてもいた。

 だが、かつてリンドン・ジョンソン大統領の特別顧問を務めたラリー・テンプルに言わせると、今の空気は父ブッシュのときと大きく異なる。「人々はジョージ・W・ブッシュの大統領時代を今も生きている。不満は根強い。イラク戦争のせいかもしれないし、経済情勢のせいかもしれない」

 大統領史に詳しいテキサス大学のブキャナンによれば、「同時代を生きた人が全員この世を去り、大統領自身もこの世を去るまで、その大統領についての完全かつ公平な評価は聞かれない」ものだ。そんな日は、だいぶ先になる。

 歴史の審判を、ひたすら待つのはつらい。なにしろブッシュはまだ62歳、元気いっぱいだ。

 地元のブログによれば、ある日パーシング小学校を訪れたブッシュは、生徒の親から学校行事のお化け屋敷に参加しないかと誘われて、こう答えた。「ああ、私ならいい幽霊になれそうだよ」

 (筆者はテキサス大学オースティン校ジャーナリズム学部教授。著書に『長男││ジョージ・W・ブッシュとブッシュ王朝』がある)

[2009年6月17日号掲載]

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