25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ」とは何か? 対策のカギは「航空機のトイレ」に
How Airplane Toilets Could Help Track 'Silent Pandemic'
地理的な差も明らかに
さらに、排水サンプルには明確な地理的差異も見られたと、論文共著者で南オーストラリア大学(UniSA)の微生物学者ニコラス・アッシュボルト教授は述べている。
「特にインドを含むアジア発の便では、ヨーロッパやイギリス発の便と比べて抗生物質耐性遺伝子の濃度が高かった」とアッシュボルト教授は声明で述べている。
今回分析された44便の国際線のうち、インド発が18便、イギリス発が14便、ドイツ発が6便で、残りはフランス、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコ、南アフリカ、日本、インドネシアからの便だった。
研究著者のひとりで、中国・厦門大学からの客員研究員ヤウェン・リウ氏によれば、こうした地域差は抗生物質の使用状況や水の衛生状態、人口密度、公衆衛生政策の違いを反映している可能性があるという。
消毒剤は遺伝物質に影響を与えるのか?
研究チームはさらに、航空機トイレで使用される消毒剤が遺伝物質にどの程度影響するかも検証した。その結果、強力な消毒剤にさらされた場合でも、核酸は最大24時間にわたって安定して存在し続けることが確認され、航空機の排水が監視手段として有効であることが裏付けられた。
「国際的な移動は、AMRの拡大を促す主な要因のひとつだ」とリウ氏は指摘する。「航空機の排水を監視することで、耐性遺伝子が地域環境に定着する前に、その存在を検出・追跡できる可能性がある」