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落下地点は予測不能...空から降る「宇宙ゴミ」の高まるリスク...「航空機に直撃」する確率は?

Falling Space Junk Threatens Flights

2025年4月15日(火)18時00分
イアン・ランドル(科学担当)

衛星打ち上げ側の責任

宇宙ゴミが空の旅を妨害した前例がある。22年には20トンもあるロケット残骸が落ちてきて、フランスとスペインの空域の一部が閉鎖された。

「最近もスペースX社の宇宙船が打ち上げ直後に爆発し、急きょ特定の空域が閉鎖される事態があった」。論文の筆頭著者ユアン・ライトは報道向けの声明でそう指摘している。「このときは当局が進入禁止区域を設定し、多くの航空便が迂回を強いられた」


しかし、もっと面倒な事態もあり得る。打ち上げ直後のロケットならどこへ落ちてくるかは分かるが、地球周回軌道から落ちてくる宇宙ゴミの場合は予測不能だ。

現状では、危険を察知した航空管制当局が航路変更などの指示を出しているが、論文の共著者で物理学者のアーロン・ボリーによれば、本来はロケットを打ち上げる国や企業が責任を持つべきだ。理論上、大気圏に再突入してくるロケットの残骸や衛星の制御は可能なのに、宇宙産業は知らん顔を決め込み、そのリスク対応を航空会社や乗客に押し付けている。

共著者のマイケル・バイヤーズに言わせると、やはり問題の解決には国際的な協調が必要だ。「衛星を打ち上げる国や企業に(宇宙ゴミ制御の)義務を負わせない限り、彼らはロケットの設計改良に投資しない。各国が協力して新しいルールを作るべきだ」

Reference

Wright, E., Boley, A., & Byers, M. (2025). Airspace closures due to reentering space objects. Scientific Reports, 15(1), 2966. https://doi.org/10.1038/s41598-024-84001-2

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