「神童」の能力だが、認知症の老人でもある...AIが人間の医師には「絶対勝てない」理由
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パーマネンテ・メディカル・グループの元CEOで、現在はスタンフォード大学医学大学院の形成外科臨床教授およびスタンフォード大学ビジネススクールの教員を務めるロバート・パール(Robert Pearl)は、研究とは異なる結論に至った。
LLMモデルの弱点から、彼は高齢者の認知低下ではなく子供の認知発達を連想したのだ。
AIは短期間で飛躍的に進歩したと、パールは本誌に語った。チャットGPTが登場したのは2年と少し前。2歳でこれだけ賢ければ5歳になる頃には神童だと、彼は考える。
パールはAIを医学部の学生のように扱う。つまり最終的な診断や診療方針の決定を任せることはないが、研究助手としては頼りにし、仕事の出来は必ず何度も確認する。
パールによればチャットGPTが提供する情報の98%は「素晴らしい」が、残りの2%はハルシネーション(もっともらしい誤情報)だ。それでもこの技術は今後さらに進化し、多くの命を救うと予想する。
「社会が医療ミスに目をつぶることを、私は非常に憂慮している」と、パールは言う。「アメリカでは毎年、実に40万人近くが誤診で命を落とす。AIをどう使えばこの数字を減らせるのか考えていくべきだ」
AIの導入で業務が軽減されれば医師は患者との対話や診察に注力できるようになり、医師の燃え尽き症候群も減るかもしれない。「患者は医師の専門知識を重視する一方で思いやりや対面でのやりとり、いわば『手を握ってくれる』ような診療を求めている」と、パールは語る。