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ベトナム

森を守り、搾取を乗り越える...「知られざるお茶大国」ベトナムで「古木茶」経済が動き出した

2026年3月19日(木)20時55分
安藤智彦

ファムさんの工房で働く、地元の少数民族の女性たち。ハノイの学校に進学したのち、「働き口がある」ということで戻ってきた人もいる

ファムさんの工房で働く、地元の少数民族の女性たち。ハノイの学校に進学したのち、「働き口がある」ということで戻ってきた人もいる 写真:ブイ・タン・ビン

自分たちのお茶の価値に気づいていなかった

ミン・ハイさんのように、地元住民との連携で収穫の質と量を担保し、シャン・トゥエット茶をブランド化して展開する生産者が増えている。

自分たちが先祖伝来の土地で生活の一部として育んできたお茶の「価値」に気づいたというケースもあれば、その品質に魅せられた者が、地元住民と連携して生産を拡大するようになったケースもある。

「このあたりで栽培されるお茶は、国境を越えてやってくる商人に買い叩かれていることが多かったんです」

古木茶の歴史をこう説明するのは、一般社団法人日越食文化協会(JVGA)の代表理事で、ベトナムの食文化の日本への輸出や、ベトナムと日本の食の交流促進に携わる松尾智之氏だ。

「交通アクセスのしにくさや情報格差もあり、自分たちのお茶の価値に気づいていなかった。政府が自国産業の保護育成に舵を切ったこともあって、古木茶を軸に据えた経済が軌道に乗り始めているところです」

もっとも、お茶をそのまま販売するだけでは、ブランディングとして弱いだろう。それゆえ、ハザンの古木茶が持つポテンシャルを、単なる「伝統」で終わらせず、現代のライフスタイルへと翻訳する動きも加速している。

その象徴とも言えるのが、ベトナム北部を中心に急速に店舗網を広げているティー&コーヒーチェーン「ラー・チャー」だ。2025年12月時点で、ハノイやバクザン省、バクニン省などに15店舗を構える。

「ラー・チャー」の最大の特徴は、ハザン産のシャン・トゥエット茶を、あえてエスプレッソマシンで抽出するという革新的なスタイルにある。急須でゆっくりと淹れる伝統的な作法とは対照的に、高圧で一気に引き出されたお茶の旨味と香りは、驚くほど濃厚で力強い。

伝統的な「カフェ・スア」などのコーヒーに加え、シャン・トゥエット茶をベースにしたフルーツティーやチーズティーなどを提供するローカルチェーン「ラー・チャー」

伝統的な「カフェ・スア」などのコーヒーに加え、シャン・トゥエット茶をベースにしたフルーツティーやチーズティーなどを提供するローカルチェーン「ラー・チャー」 写真:ブイ・タン・ビン

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