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宮大工の技で森を循環させる――世界最古の企業、金剛組が挑む「大きな柱」の危機

2025年10月20日(月)13時00分
ニューズウィーク日本版編集部SDGs室 ブランドストーリー
47都道府県から届いた材木の束。各材に産地を示す焼印が押されている

47都道府県より届いた材木、束ねた材木には各地の焼印が施されている

<大阪・関西万博で注目を集めた「束ね柱」は、単なる展示ではない。間伐材を束ねて大径柱に変える宮大工発の構法だ。創業1447年目を迎える金剛組が、森林の循環と伝統建築の維持を両立させる実装へ、新たな挑戦を行っている>

日本企業のたとえ小さな取り組みであっても、メディアが広く伝えていけば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。そのような発信の場をつくることをミッションに、ニューズウィーク日本版が立ち上げた「SDGsアワード」は今年、3年目を迎えました。

私たちは今年も、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。

◇ ◇ ◇

日本は国土の約7割が森林で、その4割は人工林だ。人工林は管理を欠くと、水・生物・防災・気候の各面で本来の働きを発揮できなくなる。したがって、適切な時期で伐採と植林を繰り返す「循環する森林経営」が必要だ。

しかし、現場ではこの循環が十分に機能していないという指摘がある。伐採の時期を迎えた人工林が採算性の問題から放置され、一方で、間伐材を中心とする木材資源の活用も進んでいない。

社寺建築や伝統建築の修復には大きな径の木材が不可欠だが、環境・価格・量・加工技術の制約により、その調達が年々難しくなっている。

資源は眠っているのに、必要な大径木(たいけいぼく)は不足する――このねじれが、文化財修復と伝統建築の維持に深刻な制約となっている。

この構造的課題を前に、宮大工の専門家集団である株式会社金剛組は、人工林の循環利用と伝統建築に必要な木材の確保を両立させる解決策の検討に乗り出した。

適切な伐採と植林の循環を広め、宮大工の技で課題に挑む道筋を作っている。

束ねるのは木と技、そして次代

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大阪・関西万博で「束ね柱」の設営に挑んだ、金剛組の社員と宮大工たち

株式会社髙松コンストラクショングループのグループ会社である金剛組は、飛鳥時代の西暦578年に創業し、今年で創業1447年目を迎える世界最古の企業とされる。

聖徳太子の四天王寺建立に始まる歴史を持ち、専属宮大工の職人集団「匠会」によって、神社・仏閣の建立・再建や国宝・重要文化財建造物の修復を担ってきた。伝統的かつ高度な技法を継承・発展させ、日本の社寺建築を支える存在だ。

同社が2022年から開発を進めてきた「束ね柱(たばねばしら)」は、宮大工の木組み技術を応用し、釘やボルト、接着剤を使わずに小径材(主に間伐材)を束ねて大径柱とする構法である。金属部材を使わないため腐食リスクが小さく、分解して再利用でき、資源循環にも直結する。

人工林の循環利用を進めながら、間伐材を束ねて柱に用いる具体的な工法で、大径木不足の解決を目指している。

取り組みの背景には、森林管理の停滞や大径木不足という現実に加え、匠の技を継承するという社会的使命があった。

金剛組はこれまでも「匠育成塾」による後継者育成に注力してきた。そうした流れの中で、技の継承と資源循環を結びつける挑戦として「束ね柱」の技術検証を進めてきた。

2023年7月には、90角(幅90mm、厚み90mm)の角材を9本束ねて「270角柱」と「270丸柱」という試験体を作り、日本建築総合試験所で曲げおよび圧縮の試験を実施。結果として、同じ断面の無垢材よりも高い強度を持たせることに成功した。

量産・製品化に向けてはいくつか課題が残っているものの、寺社の大径柱や中規模木造建築への展開を視野に、検証を継続している。

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