フードロス削減、農業課題解決...トレハロースで「安定的な食料確保」を目指すナガセヴィータ
干ばつになると、植物にストレスがかかり収穫量が減るが、トレハロースを散布することで植物が本来持つ干ばつに対する抵抗性を誘導できることが分かった(ナガセヴィータとブラジルのサンパウロ州立大学との共同研究の様子) 提供:Field Science/UNESP Team, Botucatu-SP, Brazil
<糖質の一種であるトレハロースを世界で初めて大量生産したナガセヴィータ。食品のおいしさを長持ちさせ、食品廃棄の削減に貢献しているだけでなく、近年は化学肥料に代わる農業資材への取り組みを強化している>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
ナガセヴィータ株式会社は、代表製品であるトレハロースを活用した、持続可能な食料システムの構築を推進している。食品用途に利用することでフードロス削減に繋げているほか、「安定的な食料確保」を実現するために、近年では化学肥料に代わる自然由来の農業資材への取り組みを強化している。
トレハロースの大量生産を実現し、フードロスの削減に貢献
トレハロースは、自然界に存在している糖質の一種だ。きのこ類や海藻、酵母などに多く含まれており、水分を保持したり、たんぱく質を安定化させたりといった働きを持っている。抽出が難しいことから、かつては希少な糖質として高値で取引されていた。
1994年、世界で初めてトレハロースを大量生産する方法を開発したのが、岡山県の老舗食品メーカー、ナガセヴィータ株式会社(当時は株式会社林原)だ。約140年前に創業して以来、自然界にある微生物や酵素を研究し、新しい素材を生み出してきた経験を活かし、大量安価な製法を確立させた。そのおかげで、現在ではその優れた働きが多様な用途で活用されている。
その一つが、食品分野での利用だ。ナガセヴィータの製造するトレハロース(製品名「トレハ」)は、炭水化物の老化抑制や、たんぱく質の変性抑制などの機能を有しており、野菜や果物の新鮮さを維持したり、加工食品の風味や色味、食感の維持向上に役立っている。
世界でフードロスの削減が重要な課題と位置づけられるなかで、食品のおいしさを長持ちさせるトレハロースの働きは、確実に食品廃棄量の削減に繋がっていると言えるだろう。
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