「低山だから大丈夫」が招く遭難...日本一「救助要請が多い山」の現実
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<登山・アウトドアを専門とする編集者でライターの野村仁さんによれば、遭難理由の大半は転落や滑落ではなく、「疲れて歩けなくなった」「暗くなって動けなくなった」といった準備不足による>
日帰りで登山が楽しめる「低山」で遭難が相次いでいる。登山やアウトドアを専門とする編集者でライターの野村仁さんは「遭難と聞くと死亡事故や大規模な被害者が出る事故のイメージがあるが、実際は『疲れて歩けない』という救助要請が多い」という――。
※本稿は、野村仁『ブームの落とし穴「低山」登山のやってはいけない』(青春新書プレイブックス)の一部を再編集したものです。
遭難の理由は「疲れて歩けない」程度が大多数
本稿では、遭難事故のすべてが深刻で悲惨なものではない、という話をします。山岳遭難が恐ろしく忌まわしいものと感じられるのは当然ですが、そこには、マスコミの報道や、遭難を描いた本などで伝えられるイメージが大きく影響しています。
マスコミの報道は、当然、大きな被害を生じた遭難のほう、つまり死亡事故や重傷事故を取り上げます。とくに、複数の人が死亡した事故、多数の人が同時に遭難する大量遭難、同時多発遭難になると、大々的に報じられます。
しかし、実際の登山・ハイキングでは、もっと軽い理由で遭難している例が多いのです。例を挙げると、「疲れて歩けない」というような理由での救助要請です。これが多発している山は、いま一番人気で標高599mの高尾(たかお)山(東京都)や、静岡県側の富士山です。
高尾山では、2023年に133人、24年に131人の遭難がありました。警察庁の毎年の遭難統計で、23年から突然、高尾山、富士山、穂高(ほたか)連峰の遭難者数が発表されるようになったために、マスコミも高尾山の遭難多発を報道するようになりました。
高尾山は、富士山、穂高連峰のはるかに上をいく多発状況でした。おそらく全国で一番遭難の多い山になってしまったのですが、本当にそれほど危険な山なのでしょうか?






