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なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老後を軽くする脳の使い方

2025年12月19日(金)11時23分
和田 秀樹 (精神科医 *PRESIDENT Onlineからの転載)

「記憶の上書き」が心を軽くする

私たちの脳は、すべての出来事を均等に覚えているわけではありません。とくに感情を大きく揺さぶられた体験や強く印象に残った出来事は深く記憶に刻まれます。

なかでもネガティブな記憶や失敗経験というのは、「同じ失敗を繰り返さないように」と、自分自身を守るために脳が意識的に残しておこうとするのです。


ですから、成功したことよりも失敗したことのほうが忘れられないと感じるのも、ある意味では人間らしい自然な反応と言えるでしょう。

とはいえ、そうした嫌な記憶にいつまでもとらわれていたら、前には進めません。ですから大事なのは、新しい体験や気分転換をして「記憶の上書き」をすることです。

そうすることで嫌な記憶が引き出される頻度も減っていき、次第に心が軽くなっていきます。

その反対に、気持ちの切り替えができないままでいると、「また失敗するかもしれない」という不安が頭を占めるようになり、ますます動けなくなってしまいます。そして動けない自分に対して、さらに自己嫌悪がつのるという悪循環に陥ってしまうのです。

こういうときに意識しておいていただきたいのが、「考えても始まらないことは、考えない」という姿勢です。

「これから何をするか」が大切

ネガティブな想像をしたところで、現実は変わりません。

しかし、動けない人ほど頭のなかで何度もシミュレーションを繰り返してしまうものです。しかも落ち込んでいるときには、その後の悪い展開や悲観的な未来ばかりが浮かんできて「やっぱりやめておこう」と躊躇(ちゅうちょ)してしまう。そんなことを繰り返していては、いつまでたっても嫌な記憶が上書きされないままです。

ですから、まずは「過去の出来事はもう変えられないのだ」という事実をきちんと受け止めることが大事です。そして、過去のことを悩んでも、未来は変わらないのだから、これから「何をするか」に目を向けることです。

人生には思い通りにいかないこともありますし、誰にでも失敗はあります。しかし同じ失敗でも、それをどう捉え直すかによってその後は大きく変わってきます。

「あのときの失敗があったからこそ、今の自分がいる」「あの辛い経験から学べたからこそ、同じ間違いを繰り返さずにすんだのだ」――そんなふうに捉えられたとき、人はその経験に意味を見出(みいだ)すことができるのです。

ですから、失敗したと思ったらその原因を冷静に分析し、次にどう活かせるかを考え続けることが大事です。私も精神科医としてさまざまな人の人生を見てきましたが、失敗をきっかけに考え方を変えた人は、むしろその後の人生が大きく好転することが多いと感じています。

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