最新記事
発達障害

手に負えないのはADHDだから? 家族に順位を付け、父親を「君づけ」で呼ぶ不登校小6男子の場合

2024年6月17日(月)16時00分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

父親は、「祖父として、Jのこともかわいがってくれるし、我々も経済的に世話になっています。だから、今まで文句を言ったことはありませんでした。でも、考えてみれば、Jも両親と祖父とをどう位置づけたらいいのか、混乱していたと思います」と話しました。

母親は、「私が子どもの頃から、父はいつも正しかった。だから、私自身も何でも相談してきました。今では、Jは自分のことを『プチボス』と呼ぶようになって、父親よりも偉そうにしています。一方で、夫は私の父を立ててくれていましたので、この家族は私の父が中心でいいと思ってきましたが、Jにとってそれではいけないことが理解できました」と話し出しました。

食事どきの上席も、父親に譲るように

J君の将来のためには、教育方針について、祖父の考えではなく、両親が決めたルールに合わせて、祖父にも協力してもらう必要があります。私は、その協力を祖父に頼むことを両親に勧めました。すると、父と母は顔を見合わせ「やっぱりそこが問題か」と腑(ふ)に落ちた様子でした。

そして、早速、J君の両親は「クリニックでアドバイスを受けた」と祖父と話し合いをもちました。かねてから不登校になったJ君を心配していた祖父は、その提案をすんなりと受け入れました。J君が「テレビを見るために、ボスのところに泊まりにいきたい」と言っても断ったり、「両親の承諾を得てからにしなさい」と諭したりするようになりました。

私は親ガイダンスで、J君の成長にとっては、祖父ではなく、両親の役割が主体となるべきであることを説明しました。J君についての大切なことは父と母が話し合って決定し、それを本人に伝えるということです。子どもが何かを要望しても、それが妥当なものなのか、それともわがままなのかも、きちんと親が区別するべきと伝えました。

さらに、両親の関係についても話をしました。

自分の夫が家事や自分の親の送迎をしてくれることについて、妻として感謝の気持ちがあるのなら、それを言葉で伝えることを勧めました。母親が父親を大切に思っていることを目(ま)の当たりにすることも、子どもの成長にとっては重要なことなのです。

また、以降は父とJ君が一緒に過ごす時間を増やすように助言しました。

それまでは祖父と出かけることが多かったJ君でしたが、父親と一緒に買い物に行ったり、公園でキャッチボールをしたりすることが増えました。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英ロンドンで大規模デモ、反移民訴え 11万人参加

ビジネス

フィッチが仏国債格下げ、過去最低「Aプラス」 財政

ビジネス

中国、米の半導体貿易政策を調査 「差別的扱い」 通

ワールド

アングル:米移民の「聖域」でなくなった教会、拘束恐
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 6
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で最も「火山が多い国」はどこ?
  • 9
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 10
    村上春樹は「どの作品」から読むのが正解? 最初の1…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中