最新記事
サプリ

サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

MELATONIN AND CHILDREN

2024年5月2日(木)19時26分
ジェス・トムソン(本誌科学担当)
寝付きの悪い子供のサプリ常用には要注意

サプリ使用で子供が眠れない根本原因が分からなくなる懸念も LIGHTFIELDSTUDIOS/ISTOCK

<アメリカでは幼い子を眠らせるためにメラトニンを与える保護者が急増しているが、寝付けないときは薬を飲めばいいと教えてしまうのは問題だ>

アメリカでは5~12歳の児童のほぼ5人に1人が、寝付きを良くするためにメラトニンの市販サプリを飲んでいるらしい。コロラド大学睡眠・成長研究所のローレン・ハートスタインらの調査で、そんな実態が明らかになった。

論文はJAMA(米国医師会報)小児科版の2024年1月号に掲載された。

メラトニンは体内で自然に生成されるホルモンの一種で、夜間に分泌量が増えて人を睡眠に誘うことが知られている。しかし合成メラトニンの安全性はまだ十分に確認されておらず、しかも市販品はサプリ扱いなので米食品医薬品局(FDA)の規制も緩い。

とはいえ保護者はメラトニンなどのサプリに頼らず、スマホを見る時間を制限するなどして自然な睡眠習慣を付けさせるよう努めてほしい。ハートスタインはそう語った。

今回の調査は23年上半期に保護者1000人を対象に実施。

「過去30日間にメラトニンを与えたことがある」と回答したのは5~9歳児の保護者で18.5%、10~13歳児では19.4%。未就学児でも6%だった。ちなみに17~18年に実施した調査では、わが子にメラトニンを与えていると回答した保護者はアメリカでも1.3%にすぎなかった。

メラトニンの副作用はごく限られているが、とハートスタインは言う。

子供がメラトニン漬けだと「子供たちの睡眠障害の本当の原因が分かりにくくなり、正確な診断と治療の妨げになりかねない。また健康な睡眠習慣を身に付けるべき時期に、寝付けないときは薬を飲めばいいと教えてしまうのは問題だ」。

サプリより健康な習慣を

ちなみに23年4月のJAMAに発表された別の研究によれば、甘く味付けされたメラトニンのサプリ25種類を調べたところ、22種類でメラトニンの含有量がラベルに表示された量と異なっていた。3倍も多いものもあれば含有量ゼロのものもあったという。

またグミのようなタイプのサプリだと、幼い子はお菓子のつもりで食べてしまいがちだ。結果、12年からの10年間で幼児のメラトニン摂取量は6倍以上に増えたという疫学的データもある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米北東部に寒波、国内線9000便超欠航・遅延 クリ

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中