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なぜ自由を叫ぶ者が奴隷を飼った? アメリカの原罪と高貴な理想の衝突を描くドキュメンタリー

The Story of US

2025年12月27日(土)16時00分
カーロ・ベルサノ (本誌英語版エディター)

『プリンストンの戦い』

独立軍を率いたジョージ・ワシントン(中央)を描いた『プリンストンの戦い』 STOCK MONTAGE/GETTY IMAGES

そもそもアメリカ人が独立戦争について考えるとしても、思い浮かぶのはボストン虐殺事件、レキシントン・コンコードの戦い、そして『デラウェア川を渡るワシントン』という有名な絵画くらいだろう(あの絵についてバーンズは「夜の嵐の中、凍った川でボートの上に立つ人なんていないよね」と語る)。

確かにそれらも物語の一部だ。だが愛国者たちの高潔な理念をめぐるロマンは、時代の矛盾を覆い隠すことがある。


バーンズによれば、独立戦争(実際の戦闘だけでなく、並行してフィラデルフィアで交わされた議論の数々を含む)は、啓蒙思想期に広がった「人間の自然権」をめぐる思想を土台にしていた。そして、奴隷制が根付いていた13のイギリス植民地からなる生まれたての国を舞台に「自由」と「人権」という理念を掲げて展開された、混沌として時に偽善的でもある「理念の戦い」だった。

「自由、自治」と「奴隷制、先住民への過酷な扱い」という全く正反対の理念を、当時その渦中にいた人々はどう両立させようとしたのか──バーンズの探究心を最も駆り立てたのは、まさにその人間ドラマだ。だからこそ、彼はアメリカ独立戦争を「キリストの誕生以来、世界史で最も重要な出来事」と呼ぶ。

これは決して誇張ではない。映画は、印紙法反対運動などが起きた1750〜60年代の独立戦争前夜から始まる。そして当初はばらばらだった13の植民地の人々が、海の向こうの君主の臣民を脱して「近代的市民」となり、世界を覆し、その後の民主主義運動を生み出していく過程を描く。

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