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「アニメである必要があった...」映画『この世界の片隅に』片渕監督が語る「あえて説明しない」信念

2025年12月26日(金)16時30分
※国際交流基金Webマガジン「をちこち」より転載

映画『この世界の片隅に』片渕須直監督

書物や地図はもちろん、当時の服装や髪型の流行から戦闘機が飛んできた方角まで、制作にあたり徹底的に調査を行った。調べることを通して、当時の暮らしを浮き彫りにし、そこで生きた人々の思いに向き合う制作スタイルはいまも変わらない。書斎の本棚には、片渕監督の制作に欠かせない膨大な資料が収められている。


遺された言葉を理解し、「戦争の知識」を次世代へと伝達する

── 日本では、第二次世界大戦の経験者が年々少なくなっています。戦争の記憶の継承についてどうお考えですか?

片渕: 私は、「記憶の継承」ということについては、体験した当事者ではない以上もう不可能だと思っています。記憶とはあくまで体験者だけのもの。戦争のない日本に生きる私たちは、伝え遺された言葉の背景にあったものを知りません。

語られた言葉が示す表層にのみ注目するのではなく、その背景にあった世界そのものを、当時を伝える文書や映像で残された記録に数多く触れたり、それらを比較したり、背景に何があったかを理解した上で、ひとつひとつの言葉の意味を考えようとするべきなのだと考えます。

さらには、日本国内のことだけでなく、同じ第二次世界大戦の中にあったイギリスやドイツといった、各国の当時の様子にまで視野を広げて、これまでとは違ったより客観的な視点で日本が経験した戦争を捉えることすら必要なのではないでしょうか。

今、枕草子を題材に千年前の日本を舞台にしたアニメーション作品『つるばみ色のなぎ子たち』を作っています。先に述べたような、「検証しながら理解を深めていく」というプロセスが有効だとするなら、どんなに遠い時代であったとしても、私たちの「知りたい、理解したい」という心は届くのではないかと考えています。

片渕須直(かたぶち すなお)

映画『この世界の片隅に』片渕須直監督

アニメーション監督、脚本家。1960年、大阪府生まれ。『魔女の宅急便』(1998年・演出補)をはじめ、数多くのアニメーション番組やアニメーション映画の脚本、制作を担当。1996年のテレビシリーズ『名犬ラッシー』で監督デビュー。代表作に『アリーテ姫』(2001年)、『マイマイ新子と千年の魔法』(2009年)などがある。

『この世界の片隅に』(2016年)では、富川(プチョン)国際アニメーション映画祭長編コンペティション部門グランプリ、日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞受賞(ともに2017年)をはじめ、国内外で数多くの賞を受賞。日本大学芸術学部映画学科特任教授、日本大学芸術学部上席研究員としても活躍。

『この世界の片隅に』

2016年公開の長編アニメーション映画(原作:こうの史代、監督・脚本:片渕須直、制作:MAPPA、配給:東京テアトル)。

累計484館で上映(2019年10月時点)され、1133日連続上映という国内最長記録を樹立。当時の累計動員数210万人におよび、興収27億円超を記録し、ミニシアター系作品として異例の成功を収めた。世界60以上の国・地域でも公開された。

2019年には新規映像を加えた長尺版『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』が公開。2025年、戦後80年を記念して日本各地でリバイバル上映された。

国際交流基金が主催・協力した上映に、日タイ修好130周年を記念した「日本映画祭2017」や日本アニメ・ライフスタイル映画祭(エストニア・2018年)、カナダ日系文化会館共催のオンライン上映(2020年)などがある。「戦争がいかに恐ろしいものであり、どこであろうと起きてはならないことだということを描いた、良い映画でした」など国境を超えた共感が広がっている。

公式サイト:https://konosekai.jp/


※本記事は国際交流基金Webマガジン「をちこち」からの転載記事です。


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