最新記事
メディア

エルモが子供を洗脳している...『セサミストリート』はトランプ政治とテクノロジーに殺される?

Big Bird’s Big Battle

2025年5月23日(金)14時17分
ヘスス・メサ
『セサミストリート』の初期の登場人物とビッグバード(1969年頃)

『セサミストリート』の初期の登場人物とビッグバード(1969年頃) CHILDREN’S TELEVISION WORKSHOPーHULTON ARCHIVE/GETTY IMAGES

<「税金でリベラルの主張を放送するな」──保守派の「偏向放送」攻撃で、老舗番組はいまや文化戦争の戦場に。さらには巨大テック企業の暗い影も忍び寄り>

かつてアメリカの親たちは、子供をテレビの前に座らせることに何のためらいも感じなかった。

『セサミストリート(Sesame Street)』のような番組は何十年もの間、子供たちにとって安全な隠れ家と考えられていた。健全な教育番組で、子供たちはアルファベットや基本的な算数、時には道徳心や子供であることの意味まで学ぶことができた。

Sesame Street & Bluey: Elmo and Cookie Monster Read "What Games Should We Play!"



だが今では、看板キャラクターのエルモでさえ、アメリカの文化戦争や急変するメディアビジネスと無縁ではない。

『セサミストリート』の放送開始は、ニクソン政権時代の1969年。テレビ業界の最長寿番組の1つだ。

制作は非営利団体のセサミワークショップ(Sesame Workshop)。アメリカではPBS(公共テレビ放送網)が何十年も加盟局に配信してきた。PBSはナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)と共に米公共放送公社の資金援助を受けている。

米連邦政府が直接支出する『セサミストリート』向けの補助金は年間500万ドル前後。『セサミストリート』の海外版は米国際開発庁(USAID)の資金援助を受け、欧米への好感度を上げる効果的ツールと見なされてきた。

USAIDと言えば、ドナルド・トランプ大統領が3月初旬の議会演説で予算の無駄遣いの典型として名指しした機関だ。

『セサミストリート』と政府の深いつながりは、3月下旬の下院小委員会の公聴会でも問題になった。共和党の議員たちはPBSとNPRの経営陣を呼び付け、公的資金で運営される機関が納税者の負担でリベラル派のイデオロギーを宣伝していると批判した。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

子どもの健康巡る米政府報告書、存在しない研究引用 

ビジネス

中国シャオミ、新型SUV「YU7」を北京で披露 テ

ビジネス

NZの金利は中立ゾーン、今後の政策はデータ次第=中

ワールド

米、60日間のガザ停戦提案 人質解放なども
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 5
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 6
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 7
    中国戦闘機「殲10」が仏機を撃墜...実力は本物? 世…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 9
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 5
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 8
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 9
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 10
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中