『レ・ミゼラブル』の楽曲を「歩格」で見てみると...楽譜と歌詞に織り込まれた「キャラクターの心」とは?
"down"が強い音なので、音楽では頭拍がこの"down"に置かれ、第1音節の"Look"は、弱い音のため、小節の手前におかれるアウフタクトになる。さらに作曲家は、この"down"の重さを表したかったのだろう、1拍ではなく、付点4分音符の1拍半に引き延ばされている。
(中略)
しかし、旋律をみると言葉のイメージとはどこか合っていない。「下に」と言いながら、音は上に向かっている。もし言葉のイメージと音楽をあわせるなら、"down"と歌うたびに音程をさげたほうが理屈にあう。
それでは、これは何を表すのか。「下を向け」といいながら、音楽は上を向いている、それは彼らが決して屈してはいない、ということである。言葉と旋律の結びつきは、たとえばこのようなところからも見えてくる。
信じがたい、という疑い深い人のために、同じナンバーの別の詩行をみてみよう。ジャベールがジャン・ヴァルジャンを呼ぶところだ。
まず、ジャベールの1行目、数字を読み上げるところは、すでにイレギュラーないびつなリズムになっているが、それ以外は基本的にイアンブス格でできている。わたしとしては、最後の"means"が弱い音になっているところが気になるところで、ぷつっと言葉を切ってしまうような、吐き捨てるような印象をあたえる。
楽譜はどうだろうか。これまた異様な音符のならびだ(譜例7)。