最新記事

アメリカが愛する大谷翔平

勝利に飢えた大谷をニューヨークは待っている 片思いのヤンキースが笑う日

A LOVE CALL FROM NEW YORK

2021年10月5日(火)16時45分
リサ・オルソン(スポーツジャーナリスト)

211012P28_YKS_03.jpg

MLBの名門ヤンキースには、かつて日本人選手の田中やイチロー、松井(写真)も在籍 RAY STUBBLEBINEーREUTERS

大谷の体が持つ限り、ヤンキースは二刀流を認めるだろうと、マーティはみる。とはいえニューヨークに誘うには、巨額の10年契約が必要になるのか? 球団は2年後も複数選手との大型契約を消化中のはずだ。

しかし、獲得に当たって最も手ごわいハードルは今も、大谷自身の心の内にあるのかもしれない。

「大谷は4年前、ヤンキースに行きたくない、ニューヨークではプレーしたくないと明言した。最大の問題はその点にある」とマーティは言う。「最も重要な彼の心の中で、何か変化があったのか。ヤンキースは入札合戦で争うことは避けたいはずだ」

もちろん、12年から大谷に目を付けてきたヤンキースにとって、これは既に来た道だ。17年には、ゼネラルマネジャー(GM)のブライアン・キャッシュマンと、日本球界との連絡窓口を務めるアシスタントGMのジーン・アフターマンが札幌と東京を訪れて大谷のプレーを視察し、松井の力も借りて入団を説得しようとした。それでも、大谷は西海岸のエンゼルスを選んだ。

「できることは全部やった」と、キャッシュマンは当時を振り返る。「持てる全てを投じ、ファンと地元ニューヨークの情熱を伝えたが、人には好き嫌いがある。彼はわくわくするような才能を持つ若者だ。どこであろうと、彼を迎えるチームとそのファンは本当にラッキーだ」

大谷とヤンキースは今も最高の組み合わせか。その問いを再び考え始めるのに、早過ぎることはない。

大谷は勝利を求めている。ブロードウェイは、彼を待っている。

(筆者は1998年より19年間、ニューヨーク・デイリー・ニューズ紙コラムニスト等としてヤンキースを取材し、98年より全米野球記者協会会員。現在はアリゾナ州立大学客員教授〔ジャーナリズム学〕)

▼本誌10月12日号「アメリカが愛する大谷翔平」特集では、アメリカを熱狂させた二刀流について、MLBを知り尽くしたアメリカのMLB専門スポーツジャーナリスト陣がさまざまな角度でリポートする。100年後も語り継がれるであろうこの新たな歴史の始まりを、アメリカはどう見ているのか――。

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシアGDP、第1四半期は予想上回る 見通し

ビジネス

バークシャー株主総会、気候変動・中国巡る提案など否

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ワールド

ロンドンなどの市長選で労働党勝利、スナク政権に新た
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中