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独立時計師・菊野昌宏が腕時計に宿らせる、いにしえの時の流れ【世界が尊敬する日本人】

2021年8月10日(火)06時30分
前川祐補(本誌記者)

菊野のオープンな姿勢は時計づくり以外から得る知識にも影響を受けている。彼の工房には、製作道具と共に多様なジャンルの書物が並ぶ。

「生物の進化についての本を読んでいたとき、どんな環境にも適応する究極の生命体などないと学んだ。時計も万人が理想とするものはなく、お客さんと自分との世界で適応した製品を作りたい」。構想中の新製品を聞くと、「今度は針の動くスピードが昼と夜で変わるもの」と、惜しげもなく教えてくれた。

全ての工程を1人で製作するが故の菊野の悩みは、自身が「いなくなった後」のアフターケアだ。「心得のある人であれば修理できる設計ではあるが、修理リスクは必ず顧客に伝える」だが、あるシンガポールのコレクターからはこう言われた。

「アフターケアはどうでもいい。あなたのパッションが詰まった作品を、いま手にしたいんだ!」

菊野の悩みも、当面は杞憂かもしれない。

Masahiro Kikuno
菊野昌宏
●独立時計師

※この記事は2021年8月10日/17日号「世界が尊敬する日本人100」特集より。詳しくは本誌をご覧ください。

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