最新記事

映画

建造物崩壊にIMF危機...... 不穏な90年代韓国の青春を描いた映画『ハチドリ』異例のヒット

2019年9月17日(火)18時45分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

『ハチドリ』を羽ばたかせた独立系映画の支援制度

今までにも、韓国では低予算の映画が、何億もかけた一般映画を抑えて成功する例があった。もちろん作品の力があるからこそのヒットではあるが、実は、独立系映画へのサポート体制もそれに一役買っている。

韓国では、インディーズ映画の上映を支えるために、国からアート系映画館へ「独立映画上映館運営支援金」が支給されている。この支援を受けるためには、年間60%以上の芸術映画を上映しているか、映画館が保険に加入しているか、などの条件をクリアし、行政機関である映画振興委員会の審査を通過しなければならない。条件をクリアするうえでも、映画館は多様な外国映画やアート系映画を進んで上映するようになるのだ。

また、韓国では映画製作の支援も多く、制作費支給はもちろん、機材レンタルや編集や音響のミキシングを行うポストプロダクションの場所の提供なども行われている。映画祭などで上映されている韓国映画のエンドロールを注意して見ていると、支援に自治体や公募名、団体の名前がよくクレジットされている。

このように、独立映画が定期的にこのようにヒットし、きちんと注目を集めヒットする状況が整っているのは、行政のバックアップがあってのことだろう。以前、韓国の映画祭で日本の若い監督と話す機会があった。彼は韓国のインディーズ映画業界について「芸術に国の支援が入ると自分の主張が曲げられてしまうかもしれない。それなら自分のアートに行政の支援は必要ない」と言っていたが、もっと柔軟に考え、利用できるものは利用し、活用する精神で映画を撮れないものかと感じた。

韓国公開時、マスコミ試写会での舞台挨拶でキム・ボラ監督は、題名の『ハチドリ』について「ハチドリは、世界で一番小さな鳥でありながら1秒に羽を平均80回羽ばたかせている。動物図鑑によると、希望、愛、生命力などを象徴しているそうだ。主人公ウニと似ていると思った」と語った。

映画『ハチドリ』は文字通り、世界に羽ばたき認められ、凱旋封切となる韓国で評価を受けている。今後も、この『ハチドリ』のように多くの独立映画が韓国から羽ばたいていくことを期待したい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米豪・フィリピン、南シナ海で合同軍事演習 今年2回

ワールド

台湾総統、エスワティニを来週訪問へ アフリカ唯一の

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時600円超安 中東情勢不

ビジネス

金融政策の具体的手法、日銀に委ねられるべき=木原官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの大誤算
特集:トランプの大誤算
2026年4月14日号(4/ 7発売)

国民向け演説は「フェイク」の繰り返し。泥沼化するイラン攻撃の出口は見えない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】イラン情勢で「任天堂」が急落 不確実な相場で人気の優良株から売られる落とし穴
  • 2
    新しいアメリカンドリームは「国外移住」...5人に1人が海外を希望する時代
  • 3
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国防軍は崩壊寸前」
  • 4
    健康を守るはずのサプリが癌細胞を助ける? 思いがけ…
  • 5
    【銘柄】イラン情勢で一躍脚光の「NEC」 防衛・宇宙…
  • 6
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 7
    「仕事ができる人」になる、ただ1つの条件...「頑張…
  • 8
    日本は「イノベーションのやり方」を忘れた...ホンダ…
  • 9
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 10
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの…
  • 1
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 2
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文章」...歴史を塗り替えかねない、その内容とは?
  • 3
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収される...潜水艦の重要ルートで一体何をしていた?
  • 4
    韓国、生理用品無償支給を7月から開始 靴の中敷きで…
  • 5
    「南東部と東部の前線で480平方キロ奪還」とウクライ…
  • 6
    「地獄を見る」のは米国か──イラン地上侵攻なら革命…
  • 7
    撃墜された米国機から財布やID回収か、イラン側が拡…
  • 8
    停戦合意後もレバノン猛攻を続けるイスラエル、「国…
  • 9
    ポケモンで遊ぶと脳に「専用の領域」ができる? ポ…
  • 10
    中国がイラン戦争一時停戦の裏で大笑い...一時停戦に…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    米特殊部隊、米空軍兵士救出「大成功」に残る多くの疑問
  • 3
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 4
    古代のパピルスから新たに見つかった「2500年前の文…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    バリ島沖の要衝で「中国製水中ドローン」が回収され…
  • 7
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 10
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中