最新記事

Rear View

復活した『スター・ウォーズ』はファンの夢をかなえられるか

新作公開を前に、辛口で鳴るNewsweekの1999年5月17日号「スター・ウォーズの逆襲」特集を振り返る(本誌2015年1月13日号掲載記事・再録)

2015年12月17日(木)11時43分

英語版1999年5月17日号 『エピソード1/ファントム・メナス』公開時、Newsweekは「バーチャル俳優が生身の人間に取って代わる映画の未来を先取りした作品といえそうだ」と評していた

「遠い昔、はるかかなたの銀河系で......」

 おなじみのプロローグで始まるハリウッドのSF超大作『スター・ウォーズ』の最新作が今年12月、全世界同時公開される。10年ぶりの新作とあって、早くも世界中でファンの期待が高まる一方だ。

『スター・ウォーズ』シリーズ第1作が公開されたのは、今から38年前の77年のこと。それまでのSF映画とは明らかに違うスピード感とスケールの大きさ、さらに最先端の特殊撮影技術は世界を驚かせた。続く『帝国の逆襲』(80年)、『ジェダイの帰還』(83年)でも、その勢いが失われることはなく、製作総指揮のジョージ・ルーカスが作り出す壮大なサーガ(物語)に映画ファンは酔いしれた。

『ジェダイの帰還』から16年後の99年、満を持して公開されたのがシリーズ第4作『エピソード1/ファントム・メナス』だ。1億ドルを超す製作費、最先端のデジタル映像技術、豪華キャスト......ルーカスが再び見せてくれるはずの「夢」にメディアの報道は過熱する一方だった。

 そんななか、ニューズウィークは99年5月17日号の特集「スター・ウォーズの逆襲」で熱狂に一石を投じる。

 リーアム・ニーソンやユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマンなど豪華キャストで、映像の95%にCGを駆使した『エピソード1』は誰もが期待する大作。それをニューズウィークは「期待外れ。おまけに『大変な』という修飾語を付け加えてもいい」と、一刀両断にした。

 辛口で鳴るニューズウィークの映画評が特に『エピソード1』を酷評したのは、第1作以来22年ぶりに監督を務めたルーカスがあまりにデジタル技術に頼り過ぎたからだ。この映画でルーカスは演技の手直しにもデジタル技術を使い、例えば6回目の撮影で撮った俳優の顔に、3回目の撮影の映像を合成した。

「『エピソード1』は、バーチャル俳優が生身の役者に取って代わる映画の未来を先取りした作品といえそうだ」と、映画担当のデービッド・アンセンは書く。「だが同時に、ルーカスは生身の俳優から生気を奪っているようにもみえる」

 特集は返す刀で、作品のイメージと関連商品のライセンス収入を守るため、ルーカスが過剰なまでにメディア管理をしていることも批判。ルーカス側がニューヨーク・タイムズ紙のインタビュー記事に要求を突き付け、そういった条件を受け入れなかったニューズウィークへの協力を拒んだことを明らかにした。

『エピソード1』は興行収入こそシリーズ最高となる10億ドルを稼ぎ出した。だが、続く『エピソード2/クローンの攻撃』(02年)、『エピソード3/シスの復讐』(05年)も含めて、映画としての評価は初期3部作には及ばず、ルーカスは12年、自らの映画製作会社ルーカスフィルムをディズニーに売却した。今年末に公開される最新作の『エピソード7』はルーカスの手を離れた作品だ。

 同作の予告編は既にネットで公開されているが、その雰囲気はどこか30年以上前の初期3部作に似ている。『スター・ウォーズ』がルーカスの手を離れて初めてルーカス風に戻るのなら、なんとも皮肉なことだ。

<お知らせ(下の画像をクリックすると詳細ページに繋がります)>

starwars_cover120.jpg 好評発売中!
 ニューズウィーク日本版SPECIAL EDITION
「STAR WARS 『フォースの覚醒』を導いた
 スター・ウォーズの伝説」
 CCCメディアハウス


【限定プレゼント】
ルーカスフィルム公認のアーティスト、TSUNEO SANDA描き下ろし本誌表紙の「拡大版豪華ポスター(シリアルナンバー入り)」を限定100名様に!

[2015年1月13日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

野村HD、成長フェーズ入りに手応え 2030年目標

ワールド

中国のレアアース輸出、新規ライセンス第1弾発給=関

ビジネス

英中銀、銀行の自己資本比率要件を1%引き下げ 経済

ビジネス

りそなHD、社内DXに100億円投資 「生成AIも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 3
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 4
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 5
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中