最新記事

日本社会

【写真特集】「かかあ天下」の台所から見えるのは

フレームに切り取られた台所には、働き者の「かかあ」たちの闊達な日常が刻まれている

2015年9月14日(月)15時30分
Photographs by Mitsuko(谷口光子)

それぞれの日常 主婦(60代) シングルマザーの娘を見守る母親

 8月下旬、女性活躍推進法が国会で可決成立した。従業員301人以上の企業には行動計画作りが義務付けられ、女性管理職比率などの数値目標を定めて実現が求められる。しかし写真家の谷口光子は、安倍内閣の最重要課題のひとつ「女性の輝く社会」に対し、「かえってジェンダーの押し付けを感じる女性は少なくないのでは」と語る。

 谷口は、女性たちが社会から要求されるジェンダーとの折り合い方を探るため、年齢、職業、経歴が様々な女性たちの台所をライフワークとして撮影した作品「Women」を発表してきた。彼女たちの価値観、知恵、生きてきた時代背景などが蓄積された台所は、容姿を写した肖像写真とはまた違った女性たちのアイデンティティを浮び上がらせる。

 群馬県中之条町・花楽の里で9月12日から開催されている写真展「Women かかあ天下」では、中之条町周辺で生活する女性たちの台所を写した作品が並ぶ。ここ群馬は、明治時代に日本の基幹産業だった絹織物を支えた勤勉な女性たちの伝統「かかあ天下」が根付く土地柄だ。

 谷口は撮影を通じて、「かかあ天下」とは恐妻への揶揄ではなく、女性が重要な仕事を担ってきた歴史から生まれた、女性たちへの敬愛と信頼の念であり、女性たちも「かかあ天下」にプライドを持って生きていると感じた。

 「『女性の輝く社会』のヒントは『かかあ天下』の精神にあるのかも知れない」と谷口は言う。切り取られた台所一つ一つからは、働き者、しっかり者の「かかあ」たちが日々描く、闊達な動線が見えてくる。

<中之条ビエンナーレ Mitsuko(谷口光子)写真展 「Women かかあ天下」

pskaka21.jpg

美術家(30代) 群馬に移り住み、「かかあ天下」に憧れる


pskaka23.jpg

幼稚園の先生(40代) 対面式キッチンでも母親のプライバシー空間は保てない

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

インタビュー:業界再編主導へ、「どう統合起こすか常

ビジネス

バフェット氏、傘下鉄道会社BNSFによるCSX買収

ワールド

トランプ米大統領、シカゴに部隊派遣の可能性否定せず

ワールド

トランプ氏、韓国大統領と会談 金正恩氏と年内会談望
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:健康長寿の筋トレ入門
特集:健康長寿の筋トレ入門
2025年9月 2日号(8/26発売)

「何歳から始めても遅すぎることはない」――長寿時代の今こそ筋力の大切さを見直す時

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット民が「塩素かぶれ」じゃないと見抜いたワケ
  • 2
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」の正体...医師が回答した「人獣共通感染症」とは
  • 3
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密着させ...」 女性客が投稿した写真に批判殺到
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 6
    顔面が「異様な突起」に覆われたリス...「触手の生え…
  • 7
    アメリカの農地に「中国のソーラーパネルは要らない…
  • 8
    【写真特集】「世界最大の湖」カスピ海が縮んでいく…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 1
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 2
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 3
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 4
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 5
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 6
    中国で「妊娠ロボット」発売か――妊娠期間も含め「自…
  • 7
    皮膚の内側に虫がいるの? 投稿された「奇妙な斑点」…
  • 8
    なぜ筋トレは「自重トレーニング」一択なのか?...筋…
  • 9
    飛行機内で隣の客が「最悪」のマナー違反、「体を密…
  • 10
    20代で「統合失調症」と診断された女性...「自分は精…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 7
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 8
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中