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『ハウス・オブ・カード』が変えるドラマの法則

2014年8月8日(金)12時08分
ジェース・レーコブ

罪悪感のかけらもない主人公

 このドラマは冷酷さを、まるで信仰に次ぐ美徳のように描いているのが特徴だ。とすると、アメリカの政界では善人は成功できないということなのだろうか?

「いい質問だ」とウィリモンは言う。「ならば『善人とは何だ? そんな人間はいるのか?』と問い返したい。『莫大な富の裏には必ず大きな犯罪あり』という言葉がある。私はあらゆる高位高官の職の裏にも大きな犯罪あり、と考えている。ぞっとする人も多いだろうが、話としてはすごく魅力的だ。主人公に罪悪感のかけらもないとくれば、なおさら面白い」

 このドラマの基本的なテーマは野心、信頼、裏切り、欲望だ。「誰もが経験するものだろう。政治と呼ばなくても、私たちの日常は政治。こうした日々の要素が集まって巨大化し、そこにリスクが絡んだものが本物の政治というわけだ」

 高いリスクが絡むという点では、ネットフリックスも同じだ。シーズン1の13話を同時配信することで、どこまで見るのかの選択権を視聴者に与えた。その結果、視聴者はより賢くなり、より多くを要求するようになった。続きを見たい願望はさらに高まり、次のシーズン開始まで待つ忍耐力はなくなる一方だ。

 いずれは、従来のドラマに付き物だったあの嘆きが聞こえてくるかもしれない。「なんでこんなに待たされなきゃいけないんだ!」

[2014年2月26日号掲載]

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