最新記事

映画

ロンドンより面白い!映画で見るオリンピック

世界が夢中になるスポーツの祭典の魅力が詰まった名作ベスト3

2012年7月30日(月)15時38分

David Gray-Reuters

 何人たりともこの時ばかりは愛国心を刺激され、熱狂せずにはいられない。4年に一度のオリンピックは国民の心を1つに結束させるスポーツの祭典。しかし、だからこそ政治と無関係でいられない面もあり、各国の情勢が競技に影響を及ぼすことも少なくない。

 56年のメルボルン五輪で、ハンガリーの選手たちを襲った状況を描いた『君の涙 ドナウに流れ ハンガリー1956』を見ればよく分かる。当時ハンガリーで脱ソ連と自由化を求める市民運動が高まるなか、同大会に出場した水球チームの選手カルチと女子学生ヴィキの翻弄される愛を描いた作品だ。

金メダルのはかり知れない重さ

 学生連盟を結成し、自由を求めて活動するヴィキを断腸の想いで祖国に残し、カルチは五輪チームと旅立つ。しかしメルボルンに到着すると、移動中にソ連軍がハンガリーを武力弾圧し、自由への希求は壊滅的に踏みにじられたことを知る。

 気力を失う選手たちに対し、監督は「祖国は打ちのめされたが、まだ終わりじゃない。祖国の人々に金メダルを贈るんだ」と訴える。奮い立ったハンガリーチームは連勝を続け、何の因果か準決勝でソ連チームと対戦する。「ハンガリーコール」が会場に沸き起こる中、カルチは得点を重ねていく。重圧と屈辱に耐えられなくなったソ連選手が、ついにカルチの顔面を殴打。ソ連へのブーイングと大歓声に包まれ、ハンガリーは勝利を手にする。その頃、ヴィキは......。

 決勝も勝ち取り、金メダルを胸に嗚咽を漏らすカルチの想いは、観る者にも熱い塊を飲みこむような痛みと感動を体感させる。

常夏の国でそり競技に奮闘

 一方、1924年のパリ五輪で活躍したイギリスの陸上選手2人を描いた『炎のランナー』は、当時のオリンピックの雰囲気や陸上競技の状況を知る上でも興味深いヒューマンドラマだ。主人公2人の走る動機はそれぞれ違う。ハロルドはユダヤ人に対する偏見や差別をはねのけるため、元ラグビー選手で宣教師のエリックは神のためにひた走る。

 金メダルを獲ることの意味や、その勝利が彼らの人生に何をもたらすのか深く考えさせられる。同時に、ほんの十数秒のレースを駆け抜ける臨場感や、ゴールを切る快感を存分に味わえる。

 もっと楽しくオリンピックを味わいたい、という人におススメなのは『クール・ランニング』。雪など降らない常夏のジャマイカで無謀にもボブスレー(氷の張ったコースを滑走するそり競技)のチームを組み、88年カルガリー冬季五輪に参戦した選手たちの奮闘ぶりは、掛け値なしに面白い。実話を基にしたものだが、この映画をきっかけにボブスレーという競技自体を知った人も多かった。


『時代を刻んだ映画300』

 ニューズウィーク日本版9/7増刊号
『時代を刻んだ映画300』発売中

<ご購入はこちら>
または書店、駅売店にてお求めください。

<From the Newsroom>
バットマンと銃乱射の不毛な関係


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮抑止「韓国が主な責任」、米国防総省が関与縮小

ワールド

トランプ政権のEVインフラ助成金停止は違法、米地裁

ワールド

加州がWHO感染症対応ネットワークに加盟、米の正式

ビジネス

焦点:中国、サービス消費喚起へ新政策 カギは所得増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 3
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味を帯びる「超高齢化」による「中国社会崩壊」
  • 4
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 5
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    コンビニで働く外国人は「超優秀」...他国と比べて優…
  • 8
    老化の9割は自分で防げる...糖質と結び付く老化物質…
  • 9
    湿疹がずっと直らなかった女性、病院で告げられた「…
  • 10
    宇宙人の存在「開示」がもたらす金融黙示録──英中銀…
  • 1
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な一部」ではないと指摘
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 10
    韓国が「モンスター」ミサイルを実戦配備 北朝鮮の…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中