最新記事
健康

ハーバード大学准教授が語る「メンタル危機」になる前のセルフケア...認知療法で使われる技術とは?

2024年5月30日(木)11時13分
flier編集部

『スラムダンク』が、私の人生を変えた

──内田さんの人生観やキャリアに影響を与えた本は何でしたか。

まず紹介したいのが『1945年のクリスマス』。日本国憲法に女性の権利を記載してくれたユダヤ系アメリカ人、ベアテ・シロタ・ゴードンによる自伝です。この本については私の著書『ソ―シャルジャスティス』(文春新書)の中でも紹介しました。

彼女が日本国憲法草案作成チームに選ばれたのは22歳のとき。ウィーンで生まれ日本で育った彼女は、日本文化を深く理解していました。ベアテは、日本の女性が幸せになるためには男女平等が大事だと考え、女性と家庭の条文を書いたそうです。憲法に女性の権利を具体的に書いていれば、民法でも無視することはまずできない。官僚の大半が男性で、その多くが保守的だからこそ、「私がこの条文に女性の権利を盛り込むしかない」と──。そんな彼女の決断には心に響くものがありました。

私の人生を変えた一番の本は、漫画の『スラムダンク』。主人公である桜木花道の常に自分を信じる姿や、バスケットへの愛が育っていくところが大好きなんです。特に好きな登場人物は仙道彰。優しくて、静かな自信をもってやるべきことをやる。それをひけらかすことはなく、仲間の力を活かしていく。そんな静かなリーダーシップの体現者です。

スラムダンクには悪者が一人もいません。対立がある中でも、どの登場人物にも魅力があり、彼らを応援したくなる。仲間とともに目標をめざす姿に惹かれるし、何度読んでも心揺さぶられる漫画です。

クラシック音楽コメディ『のだめカンタービレ』も大好きな漫画です。20代の頃、この漫画の影響から、イェール大学音楽院で学生が演奏するコンサートを毎週観にいくようになりました。私の夫はチェリストなのですが、そのコンサートで彼を知りました。この漫画がなければ結婚していないでしょう。「人生を変えてくれてありがとう」と思える一冊です。

大好きな漫画にも、「この女性の描かれ方はどうだろうか」と問題に感じる点はあります。それでも、その漫画への愛は変わらないし、「好きなものなら全部好きでないといけないわけでもない」「問題点を認識したうえで何かを大好きで居続けることもできる」「大好きなものにも課題を感じてもいい」。そのことを子どもたちにも伝えていきたいですね。


newsweekjp_20240528105403.jpg

内田舞(うちだ まい)

小児精神科医、ハーバード大学医学部准教授、マサチューセッツ総合病院小児うつ病センター長、3児の母。2007年北海道大学医学部卒、2011年イェール大学精神科研修修了、2013年ハーバード大学・マサチューセッツ総合病院小児精神科研修終了。日本の医学部在学中に、米国医師国家試験に合格、研修医として採用され、日本の医学部卒業者として史上最年少の米国臨床医となった。

◇ ◇ ◇


flier編集部

本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。

通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されており、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

このほか、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」の運営など、フライヤーはビジネスパーソンの学びを応援しています。

flier_logo_nwj01.jpg

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、クルスク復興に工兵派遣へ ショイグ氏が今月

ビジネス

米小売売上高、5月ー0.9%で予想以上の減少 コア

ビジネス

日産、3代目「リーフ」を米で今秋発売 航続距離など

ビジネス

アングル:日銀、経済下押しの程度を注視 年内利上げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越しに見た「守り神」の正体
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 7
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 8
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 9
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 10
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中