最新記事
自己啓発

17歳で出産、育児放棄...25歳で結婚、夫が蒸発...「後悔なんてしない」「過去は振り返らない」は間違い

2023年12月6日(水)17時45分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

人々の肌に彫られて、数々の賢人たちに信じられている「アンチ後悔主義」は、当然正しいものだと思われているらしい。

この考え方は、無批判に信奉されている場合が多い。「つらい感情をわざわざ経験する必要などない」「ポジティブ思考の温かい陽だまりでぬくぬく過ごせばいいのに、雨雲を呼び寄せるなんて馬鹿げている」「未来の無限の可能性を思い描けるときに、過去のことでくよくよするなんて意味がない」......。

こうした発想は、直感的には理にかなっていそうに思える。正しく、説得力のある主張に感じられるかもしれない。しかし、そこには、見過ごせない欠陥がひとつある。

この考え方は、決定的に間違っているのだ。

アンチ後悔主義者が勧める行動を実践しても、よい人生を生きることはできない。その主張は、端的に言って――過激な言葉を使って恐縮だが、このように表現するほかないと思っている――救いようのないデタラメだ。

後悔することは、危険でもなければ、異常でもない。幸福への道からはずれるわけでもない。それはきわめて健全で、誰もが経験し、人間にとって欠かせない感情だ。

それに、この感情は有益でもある。ものごとが明確になるし、今後に役立つ教訓も引き出せる。正しく後悔すれば、かならず精神が落ち込むとも限らない。むしろ、精神が高揚する可能性だってある。

このような考え方は、はかない白昼夢のような空想でもなければ、血も涙もない冷酷な世界で安らぎを感じるためにでっち上げた甘ったるい希望的観測でもない。それは、過去半世紀以上積み重ねられてきた科学的研究により研究者たちが到達した結論だ。

本書では、後悔という感情について考える。過去にあんなお粗末な選択をしたり、誤った決断をしたり、愚かな行動を取ったりしていなければ、現在もっとよい状況だったはず、未来がもっと明るかったはず――という苦しい感情に光を当てる。

後悔に関してより正確で新鮮な視点を紹介し、後悔の強力なパワーを活用して好ましい変化を起こす方法を示したい。

演じているだけの「後悔しない主義者」

「後悔なんてしない」と言う人が嘘をついているわけではない。そのような人たちは、俳優のように役を演じているのだ。あまりに頻繁に、しかもすっかりその役になり切って演じているために、その役の世界が現実だと勘違いしている。

私たちの人生では、このように自分を騙す心理的トリックが実践されることは珍しくない。ときには、それが健全な反応である場合もある。しかし、たいていは、そうやって自分を騙すと、真の満足感を得るために向き合うべき難しい課題を避けることになる。

エディット・ピアフもそうだった。ピアフは、後悔なんてしないと主張していた。高らかに宣言していたと言ってもいい。しかし、その四七年の生涯は、悲劇やトラブルの連続だった。

一七歳で出産したが、育児を放棄し、その子どもは三歳の誕生日を迎えずに死亡した。子どもの死に関して、ピアフは後悔による胸の痛みを感じなかったのだろうか。

アルコール依存やモルヒネ依存の状態だった時期もあった。みずからが才能を発揮する足を引っ張った依存症について後悔しなかったのか。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ミーム株急騰、火付け役が3年ぶり投稿再開 ゲームス

ビジネス

米国株式市場=S&P横ばい、インフレ指標や企業決算

ワールド

メリンダ・ゲイツ氏、慈善団体共同議長退任へ 名称「

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、今週の米経済指標に注目
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 8

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 9

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中