最新記事
米中関係

イエレン米財務長官の訪中、成果は不信の3年半経た会談自体 先行き不透明

2023年7月11日(火)11時55分
ロイター
イエレン米財務長官

イエレン米財務長官が中国訪問を終えた。二国間の緊張が直ちに和らぐとの期待はなく、関係の変化につながるかもまだ分からないが、中国の新しいカウンターパートである何立峰副首相と会談し、幅広い政策について米国の意図を説明するという目的は果たした。北京で9日撮影(2023年 ロイター/Thomas Peter)

イエレン米財務長官が中国訪問を終えた。二国間の緊張が直ちに和らぐとの期待はなく、関係の変化につながるかもまだ分からないが、中国の新しいカウンターパートである何立峰副首相と会談し、幅広い政策について米国の意図を説明するという目的は果たした。

米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIC)の中国経済専門家、スコット・ケネディ氏は「会談の成果は特定の問題ではなく、会談そのものにある。この3年半、双方はほとんど対話がなく、不信が厚く積み重なった状態からのスタートだった」とし、実質的な話し合いができるようになったことは意義深いと述べた。

中国国営紙の環球時報はイエレン氏の訪中について、「実際的」で「理性的」な雰囲気だったと評したが、それが生んだ「前向き」な期待は「風にそよぐロウソクのようなもので、弱々しく不確か」だと指摘。「ワシントンの対中政策は依然として封じ込めと抑圧に重点を置いた方向と人々は考える傾向が強く、米国による経済・貿易問題の安全保障化に変化はない」と評する。

イエレン氏に同行した米財務省高官は今回の訪中について「敬意に満ちた、率直で建設的なものだった」と評価し、「彼女は温かく迎えられた」と語った。

8日に行われた何氏との会談は、2時間の予定が5時間にも及び、その後「友好的な」夕食会が開かれたという。

また、中国の李強首相や潘功勝人民銀行(中央銀行)副総裁とも会談したほか、中国に進出している米国企業の幹部や6人の女性エコノミストとも面会した。

「大きな意見の相違」

イエレン氏は記者団に対し、「不公正な経済慣行」や最近の米企業に対する懲罰的措置を例に挙げ「米中には大きな意見の相違がある」と指摘。中国側は、バイデン氏が量子コンピューティングや人工知能(AI)といった技術関連で対中投資を阻止する大統領令を検討していることなどを、問題として提起したという。

イエレン氏によると、まだ何も決定しておらず、財務省が管理する投資規制は「高度に的を絞ったものであり、具体的な国家安全保障上の懸念がある一部の数少ない分野に限定されたもの」と中国側に説明した。

貿易問題の専門家は、米中がどのように妥協に向かうか見極めるのはまだ難しいとしながらも、話し合いがベターだと語る。

日本企業
タイミーが仕掛ける「一次産業革命」とは? 農家の「攻めの経営」を後押しするスキマバイトの可能性
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=反発、アマゾンの見通し好感 WBDが

ビジネス

米FRBタカ派幹部、利下げに異議 FRB内の慎重論

ワールド

カナダはヘビー級国家、オンタリオ州首相 ブルージェ

ビジネス

NY外為市場=ドル/円小動き、日米の金融政策にらみ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 9
    【ロシア】本当に「時代遅れの兵器」か?「冷戦の亡…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中