最新記事
日本経済

1ドル140円突破で「円安ロケット」再点火か 日本株高も支え

2023年5月26日(金)17時53分
ロイター
日本の千円札と米ドルの紙幣

外為市場でドルが半年ぶりに140円台へ乗せた。写真は日本円と米ドルの紙幣。3月撮影(2023年 ロイター/Dado Ruvic)

外為市場でドルが半年ぶりに140円台へ乗せた。米債務協議の進展期待や米利上げ打ち止め観測の後退がドル全面高につながっているが、最近は日銀のハト派姿勢などを受けて、昨年のように円の下落が目立つ場面も増えてきた。33年ぶりの日本株高も、海外勢によるヘッジ目的の円売りを促している。

6月米利上げ予想が一転優勢に

140円乗せを主導してきたのはドル高だ。ドルは対豪ドルやNZドルでも半年ぶり、ユーロや英ポンドに対しても2カ月ぶり高値を更新。相次ぐ利上げと介入で年初来上昇が続いていたスイスフランに対しても、1カ月半ぶり高値圏へ切り返す堅調ぶりを見せている。

その背景は米国の利上げ打ち止め見通しの後退だ。3月に発生した米銀破綻をきっかけとする金融システム不安が沈静化する一方、インフレは依然高水準で、最近の米連邦準備理事会(FRB)のアンケートでは、物価高で「暮らしが悪化した」と回答した家計の比率が過去最高に達した。

FRB幹部の間でも利上げ継続を容認する声が出始めており、市場では「6─7月会合で利上げの一時停止が明確に宣言される可能性は低い」(大和証券)との見方が勢いを増している。米債券市場では2年債、10年債利回りがともに2カ月ぶりの水準へ上昇した。

CMEグループのフェドウオッチによると、米金利先物市場は現在、6月会合で0.25%の利上げが行われる確率を51%織り込み、据え置きの48%を上回った。ひと月前の利上げ予想は8%、据え置きが70%だった。

ステート・ストリート銀行東京支店長の若林徳広氏は「米国のインフレが思ったほど冷え込まない。ドルは強気相場となっており、今週の終値が140円台を維持した場合、142円半ばや143円が次のターゲットになる」と話している。

海外勢による日本株投資とヘッジの円売り

さらに最近は円安の動きも目立ってきた。円の対ドル下落率はこの2カ月で6%超と主要通貨間で最大に達したほか、今月に入って円は、利上げ期待の根強いユーロに対して15年ぶり、対スイスフランで8年ぶり、対英ポンドで7年ぶりの安値を相次ぎ更新した。

政府が異例の円買い介入に踏み切った昨秋、円全面安の原動力とされたのは、過去最大に膨らんだ貿易赤字だった。しかし4月貿易赤字は4324億円と、21年10月以来1年半ぶりの水準へ赤字幅が縮小したほか、月間輸入額の前年比も2年ぶりに減少へ転じた。

それでも円安が加速し始めたのはなぜか。市場関係者が注目するのは、日経平均を33年ぶり高値へ押し上げた海外勢の過去最大級の日本株投資と、それに伴う為替変動リスク回避に向けた円売りだ。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ

ビジネス

米シティ、ロシア部門売却を取締役会が承認 損失12

ワールド

マレーシア野党連合、ヤシン元首相がトップ辞任へ

ビジネス

東京株式市場・大引け=続落、5万円台維持 年末株価
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 6
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中