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加熱式たばこ「メビウス」、70円値下げの衝撃に隠された変化

2023年4月14日(金)11時20分
高野智宏

リニューアルの発表イベントで新メビウスの調査結果を語るJTのブランドマネージャー、井上開斗氏

<JT「Ploom X」用の「メビウス」ブランドがリニューアル。思い切った価格変更に注目が集まるが、この刷新の背景には、加熱式たばこユーザーが抱える「妥協」への真摯な対応があった>

日本たばこ産業(JT)の「メビウス」と言えば、文句なしで紙巻たばこの国内ナンバーワンブランドだが、現在激しいシェア争いが行われている加熱式たばこの市場においては、少々分が悪い。

同社の加熱式たばこ「Ploom X(プルーム・エックス)」用としては、「メビウス」ブランドと「キャメル」ブランドがそれぞれ8銘柄ずつあるが、実は「キャメル」のほうが売り上げは格段に多いという。「メビウス」が570円(税込)、「キャメル」が500円(税込)であったことがその背景にあるかもしれない。

帝国データバンクの調査によれば、4月に値上げされた食品や飲料は5100品目超。2月にも値上げラッシュがあったばかりで、家計への負担は増す一方だ。物価高の波に日本の消費者はさらされている。

そんな中にあって、JTは2月下旬、驚きの発表を行った。Ploom X用の「メビウス」ブランドをリニューアル。全8銘柄とも、現行の570円(税込)から、「キャメル」と同じ500円(税込)へと、実に70円もの値下げを実施したのだ(3月20日より全国発売)。ただし、その値下げ幅だけに注目していては、リニューアルの本質を見誤る。

先日、発表イベントが東京・銀座のPloom Shop銀座で行われた。

イベントでプレゼンテーションを行ったJTのブランドマネージャー、井上開斗氏によれば、加熱式たばこユーザーの約20%は、味わいや吸いごたえ、たばこスティックの価格から「妥協」して加熱式たばこを使っていることが判明したという。

その現状を打開するため、味わいと吸いごたえに着目。全8銘柄で見直しを検討し、「ACTIVBLEND for Japan」と呼ぶ、たばこ葉の新ブレンドを採用。レギュラーとメンソールの4銘柄については、味・香りの変更を行い、紙巻たばこに近い「本物のたばこ感」を追求した。

「この味わいを少しでもお求めやすく、お客様から心から好きだと思ってもらえ、末永く愛用いただくために新価格を設定した」(井上氏)

つまり今回の値下げは、これまで妥協して加熱式たばこを吸っていた層や、喫煙環境の変化などを理由に紙巻たばこから加熱式たばこへ替えてみようという層に向け、Ploom Xと新メビウスを手に取ってもらい、その「本物のたばこ感」を知ってもらうための戦略ということだ。

味わいの先にある"複雑さ"を求める日本人のために

進化した味わいの特徴は、「吸った瞬間にわかる、ひと口目からの味の濃さ」と「最後まで続く、クリアな旨味」、そして「喫煙時間を豊かにする、確かな煙量感」の3つ。JTが行った調査では、新メビウスを試した人の94.9%がその「たばこ感」に満足した結果となった。

今回のイベントでは、JTで約20年間一貫してたばこの企画開発を手掛けてきたマスターブレンダーの西野創氏と、世界的なカクテルコンペティションで3位となった実力を持つエースホテル京都のバーテンダー、齋藤隆一氏――つまり、異なるジャンルの「ブレンドの匠」同士によるトークセッションも開催された。

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「ブレンド」を切り口に新メビウスについて語り合ったJTマスターブレンダーの西野創氏(右)と、世界的なカクテルコンペティションで3位となった実力を持つバーテンダーの齋藤隆一氏(左)

西野氏によれば、紙巻たばこのように、まだ十分に知見が蓄積されていない加熱式たばこ用たばこスティックの開発には苦労が伴うという。「今回のメビウスブランドのリニューアルにあたり、たばこ葉や香料を含め原材料のすべてを見直し、さらには1銘柄につき約200回、4銘柄で計1000回弱の試喫を繰り返しました」

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