最新記事

日本社会

子供たちが登下校に限らず危険な「地方の限界分譲地」 駅チカより地価が10倍以上の人気エリアとは

2023年2月10日(金)11時30分
吉川祐介(ブロガー) *PRESIDENT Onlineからの転載
千葉県八街市の児童5人が死傷した事故現場

飲酒運転のトラックの暴走により児童5人が死傷した事故現場。事故発生当時は歩道もない抜け道だったが、事故後新たにガードレールが設置された。(千葉県八街市) 筆者撮影


日本の郊外には、タダ同然の住宅地が大量にある。どんな共通点があるのか。「限界分譲地」を取材するブロガーの吉川祐介さんは「千葉県北東部の場合、車移動を前提にしているため、ガードレールや縁石のない道路が多い。危険な通学路が放置され、子育てにはリスクが高い。だからどんなに安くても住みたがる人はいない」という――。


クルマがなければ生きていけない

筆者が住む千葉県には多くの限界分譲地がある。宅地造成されても手つかずのままになっている分譲地のことだ。都心へは車で1時間という立地であるが、売れずに放置されている。その原因について、本稿では子育てという切り口から見ていきたい。

一般的に、不動産の価格を決める上で重要な判断基準となるものが、最寄り駅、あるいは商業地域・施設からの所要時間である。

しかし、それは主に公共交通機関による移動で生活が成り立つ都市部における判断基準である。地方都市や、限界分譲地を多く抱える千葉県の小都市では、相対的に駅の重要性が低い。

周知の通り、すでに多くの地方部では日常の移動手段は完全に自家用車一択となっている住民が大半だ。鉄道はまだしも、バスにいたってはもはやその存在すら意識していない住民も少なくない。

駅から遠いほうが良いとまで考える住民は少数派だと思うが、地方の小都市の鉄道駅は古い旧市街地に位置することが多く、田舎と言えど家屋は密集し、道路も狭く自動車の通行に適していないところが目立つ。

ところが地方の場合、都市部の鉄道とは異なり肝心の運行本数が乏しい。自宅が駅前であろうと通勤や日常生活で自動車が必要になる場面は多々あるために、地価に見合った利便性が得られない鉄道駅周辺を避ける住民がいるのはむしろ自然なことである。

学校から遠い住宅地は不利になる

吉川祐介「限界ニュータウン-荒廃する超郊外の分譲地-」対して、商業施設の近隣は住宅地として一定の需要があるが、現代の地方部の商業地は、既存の市街地から離れた幹線道路沿いに展開されている。いわゆるロードサイド型店舗で、あとから大規模に商業地として開発されたものだ。

周囲はまだ広大な農地だったり、宅地として利用できたとしても、昼夜絶え間ない大型車の走行音などで住宅地として適していない場合もあり、こちらも好みが分かれる。

そのような状況の中で、現在の子育て世帯、つまり新築住宅を求めるメインの年齢層が住宅地を選ぶ上でもっとも重視している要素のひとつが、小中学校からの距離である。学校から遠い住宅地は、中古住宅であればまだしも、新築用地としてはそれだけで市場において大きく不利になっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソニー、米パラマウントに260億ドルで買収提案 ア

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高

ワールド

イスラエルとの貿易全面停止、トルコ ガザの人道状況

ワールド

アングル:1ドルショップに光と陰、犯罪化回避へ米で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中