最新記事

ロシア

プーチンがただ一人殺せない反体制派ナワリヌイに差し向けられた「生物兵器」

Navalny dying by illness may be Putin's end game: Professor

2023年1月10日(火)20時38分
ジョン・ジャクソン

牢獄からリモートでモスクワ郊外の裁判所に出廷したナワリヌイ(2022年5月24日) Evgenia Novozhenina-REUTERS

<これまでプーチンに敵対する者は暗殺されるか不審死を遂げてきたがナワリヌイは刑務所の中で生き続けているのはなぜか>

収監中のロシア反体制派指導者で、ウラジーミル・プーチン大統領に対する批判を続けていることで知られるアレクセイ・ナワリヌイが1月9日、2022年の大晦日を独房で過ごしたことをツイッターで明かした。

その後、刑務所の看守がインフルエンザにかかった受刑者を「生物兵器」として自分の独房に送り込んできたと主張。弁護士は、ナワリヌイがインフルエンザの症状を発症して体調を崩したと報告した。

現時点では、ナワイヌイの症状が命にかかわるものであることを示す兆候はない。だがある大学教授によれば、ナワリヌイが最終的に「自然死」することが、プーチンの究極の目標かもしれないという。

プーチンが権力を握ってから20年超の間に、彼と敵対した数多くの人物が暴力的な死や不審な死を遂げてきた。ナワリヌイは法廷侮辱罪や公金横領罪などで有罪評決を受けて2021年2月から収監されており、あと12年は刑務所での生活が続く見通しだ。

米ジョージ・メイスン大学公正政策大学院のマーク・キャッツ教授は本誌に対して、「もしもプーチンがナワリヌイの死を望むなら、容易にそうすることができたはずだ」と指摘した。「プーチンは、国家が直接手を下す形ではなく、ナワリヌイが病気で死んでくれた方が、自分にとって都合がいいと考えているのかもしれない」

「有名すぎて殺せない」

米ニューハンプシャー大学のローレンス・リアドン准教授(政治学)は本誌に、ナワリヌイが今も生きている理由は単純に、彼が今や「有名すぎて殺せない」からだと指摘した。

「ナワリヌイは弁護士であれ政治家であれオリガルヒ(新興財閥)であれ、プーチンにとっての政敵を怖がらせるのに便利なツールとして利用されている」と彼は述べた。「問題は、プーチンがかつてナワリヌイの暗殺に失敗していることだ(ナワリヌイは2020年に神経剤ノビチョクを使った攻撃を受けたが生き延びた。ロシア政府はこの件について関与を否定している)。この一件でナワリヌイは正義の擁護者として世界的に有名になり、欧州議会から人権や自由を擁護する活動を行う個人を称える「サハロフ賞」を授与され、メディアやソーシャルメディアを活用してロシア内外で反プーチンの政治運動を確立した」

キャッツは、インフルエンザにかかった受刑者がナワリヌイの独房に入れられた一件については、間接的にナワリヌイ殺害を狙った動きではないかもしれないと述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀、3会合連続で金利据え置き 総裁「関税動

ワールド

トランプ氏、インド関税25%と表明 ロ製兵器購入に

ワールド

トランプ氏、関税発動期限の延長否定 8月1日は「揺

ワールド

トランプ氏、FRBに利下げ改めて要求 「第2四半期
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 3
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い」国はどこ?
  • 4
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 5
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 8
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    13歳も72歳も「スマホで人生が終わる」...オンライン…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 9
    中国企業が米水源地そばの土地を取得...飲料水と国家…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中