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インフレよりヤバい世界経済の現実。これまでとまるで異なる状況になる

THE REAL STAKES

2022年8月29日(月)16時00分
ダンビサ・モヨ(エコノミスト)

そもそも、脱グローバル化と米中のデカップリング(切り離し)という世界経済の潮流により、グローバル化によってもたらされると期待されていた「ウィン・ウィン」の状況は実現しなくなったのかもしれない。「ゼロ・サム」または「ウィン・ルーズ」の状況を想定したほうがよさそうだ。

世界経済の分断が進めば、企業や投資家はグローバルな市場への分散投資が難しくなり、少数の投資対象に資金を集中せざるを得なくなる。

この場合、これまでより高い収益率が期待できる投資先への投資を増やす必要がある。実際には、投資家は投資先としてアメリカと中国のどちらかを選ぶようになり、新興国やヨーロッパへの投資は減る可能性が高い。

目先のインフレ率や向こう数カ月間の中央銀行の政策変更に関する議論に終始すれば、こうした世界経済の大きな潮流を見落とす危険がある。

もちろんインフレは深刻な問題だが、脱グローバル化と脱金融化が進む世界経済における投資環境に目を向けることを忘れてはならない。

©Project Syndicate

220906p16NW_8614_01MOYO.jpgダンビサ・モヨ
DAMBISA MOYO
ザンビア出身の経済学者・作家。専門はマクロ経済理論、グローバル経済。世界銀行やゴールドマン・サックスでの勤務を経て著述業に。近著に『エッジ・オブ・カオス』(未邦訳)。

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