最新記事

ビットコイン

仮想通貨、アフガンやガザ地区など紛争地域で人気拡大 暴落でも魅力あせず

2022年6月27日(月)10時24分
ビットコインのイメージ

アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが政権を掌握した昨年8月、それまで手作りの工芸品を販売していたオンライン商取引の「アシール」はすぐさま、アフガン国民用の緊急支援物資を買うための寄付を暗号資産(仮想通貨)で受け付ける活動に軸足を移した。写真はビットコインのイメージ。2020年4月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

アフガニスタンでイスラム主義組織タリバンが政権を掌握した昨年8月、それまで手作りの工芸品を販売していたオンライン商取引の「アシール」はすぐさま、アフガン国民用の緊急支援物資を買うための寄付を暗号資産(仮想通貨)で受け付ける活動に軸足を移した。

伝統的な銀行システムにアクセスできない人々を、仮想通貨を使って支えるこうした慈善事業は世界各地に広がっている。最近の仮想通貨相場の暴落も、この流れに水を差してはいない。

アシールの技術責任者、モハンマド・ナシール氏は、タリバンに対する国際的な制裁によって「われわれは現金決裁ができない」と語る。

アシールは仮想通貨と併せて法定通貨でも寄付を受け付け、それを仮想通貨に換えて食料や応急処置用品を買っている。アフガン東部で22日に起きた地震でも、被災者向けの寄付集めに乗り出した。この地震では約1000人が亡くなっている。

ナシールさんによると、アシールは相場変動の影響を抑えるため、仮想通貨の中でも主要法定通貨に連動するステーブルコインを使っている。もっとも、ステーブルコインの価格も大幅下落した。

仮想通貨は、代表的なビットコインが年初から約60%するなど軒並み急落しているが、制裁その他の混乱で伝統的な金融システムが使えない場所では魅力を保っている。

危機時の命綱

ビットコインその他の仮想通貨は、政府や中央銀行など中央の金融当局に管理されない自由な通貨として設計された。仲介なしでユーザー同士がオンライン送金することが可能だ。

匿名性が高いため、犯罪者や過激派集団、制裁を受けている政府に隠れ家を提供する一方、危機に見舞われた一般市民を支えていると擁護する声もある。

ロシアがウクライナに侵攻した際、活動家のLyudmyla Kozlovska氏は、戦争地帯で動けなくなった人々への支援物資購入をビットコインに頼った。

Kozlovska氏はブリュッセル在住のウクライナ人で、人権組織オープン・ダイアログ・ファウンデーションの創設者。「侵攻当初、銀行システムは機能していなかった」ため、「ビットコインが無ければ、自宅を守る民間人に届けた防弾チョッキの最初の100着を買えなかっただろう」と振り返った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中